第73話 生徒会の事情
放課後、神里先輩に生徒会室に呼び出された。
どうして呼び出されたのかは知らないが、取り敢えずさっさと向かった。
遠くの席から霧崎が話しかけようとして来たのは見えたけど、きっとクラスメイト達に囲まれてる頃だろう。
生徒会室の前に立つと、中の話し声が少しだけ聞こえてきた。
「なんか最近不審者が居たとかって聞いたっすよ」
「いつもの事だろ」
「んー…ほっとくのもね…」
不穏な会話を遮るように、俺はノックしてから生徒会室に入った。
「失礼します」
生徒会室の中に居たのは神里先輩と理緒先輩、後は玲香先輩と華怜先輩、そして中村先輩。
「やほやほ、来たね間宮君」
「おひさ…でもないや、こんちわ」
「どもっす」
「えー…っと、ご要件は…?」
「取り敢えず座れ、緊急って訳じゃねえから」
「あ、はい」
言われた通り座って、要件を聞く。
「…真、夏休み中に学校説明会があるのは知ってる?」
「はい」
「悪いけど、人手が足りてないから手伝って欲しい」
「えっと、良いですよ。てか、それくらいなら普通に当日連絡でも行きますけど…。わざわざそんな人数呼んで話す事でも無いんじゃ…」
「もう一つあるんだよ」
「…じゃあそのもう一つって何ですか?」
「間宮君さあ、夏休み明けから生徒会に入らない?」
どうやら生徒会へのお誘いのようだ。
「…立候補者がそこそこの人数居るって聞きましたけど…?」
「それはそうなんだけど、ちょっと事情があっていつも通りの選考じゃダメなんだよねえ」
「と言いますと?」
「事情はともかく、色々あって烏間伊織と松坂優美の二人が生徒会を抜ける事になった。例年通りなら夏休み明けに一年生を一人加えて、一年生三人、二年生三人の六人で、元会長の手を借りながら運営するんだけど…」
成程、ちょっと事情が異なると。
「…一年生からプラス二人と、抜けた2年生の分も選考しなきゃ行けないんですね」
「そう言う事だ。んで、お前なら残ってる生徒会メンバーと面識もあるし能力は文句無しだろ。要は松坂の代わりだが…」
成程、確かにそう言われると難しい話だ。
「因みに俺が参加しない場合ってどうなるんですか?」
答えたのは椿先輩…というか妹の華怜先輩。
「結月ちゃんは普通に会長、立候補者も居なかったからね。で、副会長が架純ちゃん。美琴ちゃんは書紀継続で…」
「そこに新メンバーを加える感じですか」
「そういう事っす」
「…因みに新しく入る二人は決まってるんですか?選挙じゃないですし」
「立候補者の中から、生徒資料貰ったり面接したりして決めたけど」
「誰です?名前聞けば同じ学年だし分かると思うんですけど…」
「霧崎紫苑と、花笠詩歩の二人」
「……ちょっと待って、全員一年二組なんですが…」
「偶然っすよそれは」
「偶然ですか……てか、何で霧崎が?転校初日でもう決まってるんですか?」
「前の高校で生徒会やってたらしいんだよね。しかもあの子アイドルやりながら」
そうなのか、凄いなそれは。
でも、確かに生徒会やってたって実績があるにはあるからメンバーに加える…というのは別におかしくないか。
花笠はまあ、真面目な奴だし納得。
さてどうしたもんか。
生徒会に入る事自体は別に構わない。
ただ、家の事でどうするべきか一旦考えさせて欲しいかな、これは。
そう思っていると理緒先輩がふっと微笑んだ。
「真、家の事で悩んでるなら今答えなくたって…」
ガラッと突然背後のドアが開いた。
「神里さん、頼まれてた資料…って、真?何やってるの?」
生徒会室に入ってきたのは黒崎先生。
ナイスタイミングである。
「ありがとうございます、黒崎先生。実は真を生徒会に誘ってたんです」
「…真が生徒会…か。流石に一人じゃ決められない事だね…」
黒崎先生は神里先輩に資料を渡すと、近くの椅子に座った。
「真は入りたいの?」
「入りたいと言うか、まあ…でもそうですね。結構熱烈に誘われてますし…」
「…んー…」
「あ、あの〜?何で黒崎先生まで一緒に悩むんです?」
「…まあいっか、その内話すことにはなるし
黒崎先生は呟くと、玲香先輩に向き直った。
「夏休み中に、私が真のこと引き取る事になってるの。間宮真、から黒崎真って名前に変わる」
「「えぇっ…!?」」
「どーゆー状況っすそれ…?」
「…それは、どういう経緯で…?」
「……成程な」
神里先輩は意味が分からないと言った様子で、ある程度の事情を知ってる理緒先輩は納得は行ってないが理解はした様だ。
俺は黒崎先生との中学校時代の関係から、家の事情に至るまでを丁寧に説明していった。
「……間宮、顔に似合わず苦労してるんっすね…」
「苦労してなさそうな顔なんですか…?」
「林間学校の時にそんな事に…」
「……間宮ぁ、もう少し顔に出しても良いんだよ?」
「大丈夫です、昔からトラブルに巻き込まれるのには慣れてるので」
「「よくないよ〜」」
良くない事だとは俺も思ってる。絶対に慣れるべきじゃない。
「……いや、まあ…はい。そういう事なんで。家の事もあって生徒会についてはどうするか考え物なんですよね」
「…まあでも、私は大丈夫だと思うよ。クロエは生活力あるから」
「クロエより姉さんが心配なんですよ。あの二人仲良くなれますかね?」
「君みたいに煽るようなことしないから大丈夫」
それで仲良くなったんだから良いじゃないか。
「……ん…まあ、黒崎先生が言うなら…大丈夫か」
「…生徒会、入るの?」
「はい、ぜひ。頼りにして下さい」
そんな訳で『黒崎真』の生徒会参加が決まった。
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