第56話 呆れた…
〜side〜柊真冬
今頃、大半のクラスメイトや先輩方は林間学校の2日目を楽しんでいる頃だろう。
林間学校に限った話ではないが、任意参加の行事は土日祝日に行われる事が多い。
部活に入ってるわけでもないのに何故参加しないのかと聞かれると、やることがあるから、と以外に答えようがない。
「……何してんだろアタシ…」
「リハーサル終わったとこだよ…「違う」…え、そういう意味じゃない?」
ギチギチのスケジュールでも全く疲れを見せない体力お化けの凛月が鏡の前で振り付けの確認をしながら、真冬の言葉に疑問符を浮かべていた。
「あー…林間学校行きたかった…」
「ねえルカ、うち林間学校なんて、あったっけ?」
「ううん、無かったよ。あ、てかさ、私ね、林間学校って行ったこと無いんだ」
「そうなの?小学校で無かった?」
「私のところは無かったな〜」
「私は…小中学校ではあったよ」
「…アタシ全部あったけど」
「今年は行けなかったと、どんまい!」
「まーまー、明日を楽しもうよ。せっかくライブだよ?」
「ルカの体力おかしいよ…」
「アンタちゃんと寝れてんの…?」
「毎日七時間くらい寝てるよ?」
「「……」」
「…?」
「ドラマ決まったわよね、そっちは大丈夫なのかしら?」
「うん、バッチリ!」
どんなにスケジュールを詰めようと、平然とこなすのが月宮ルカだ。
疲れを見せないのではなく、疲れてない。
芸能界の裏側や、黒い部分を目にしようと…
「あのグループ解散したの?えっ、メンバーのいじめか〜まあ、そんな事もあるよね」
「光と影があるのはしゃーなしよ、私達は光として頑張ろ〜」
「週刊文春?やましい事ないし気にしなくても大丈夫じゃない?」
「ね、ね、
月宮ルカってこういう子。
確かに明るいし、人当たりは良い。コミュニケーションも上手いし当人の能力も高い。
そして何より、物事の良し悪しを判断できてそれを受け入れる事ができる。
悪い物は悪いまま自分にとってよく働く様にできるし、良いものはより良くできる。
批評はするが否定はしない。
…本当、どう育ったらこうなるんだか…。
ふと、ルカのスマホが鳴った。
「…あ、見てみて!真が写真送ってくれたよ!」
ルカに送られた写真は、大きなキャンプファイヤーを背景にして、100人近い人達楽しそうに集まっている写真。
真ん中には明らかに出来立てのカップル。
「これめっちゃ楽しそう、キャンプファイヤーだよね!」
「…なんか見覚えのない人までいっぱい…クラスメイト以外はほぼ先輩よ、これ」
「真君ってそんなに先輩と仲良いの?部活とかやってないでしょ?」
「流石に交友関係とか、そこまでは知らないけど…部活はやってないはず…」
「んー…真は中学の時はあんまり交友関係広げたりして無かったけど…小学校の頃は結構学年関係なく人気あったよ」
「コミュ強なのは知ってるけど…。二泊三日の一日目でこれって…」
「この林間学校ってどういう感じなの?」
「真君は生徒会の手伝いやってる筈よ」
「……生徒会の手伝い?」
「そうは見えないけど…」
「…アタシにもそうは見えないわよ」
何やってんのアイツ…。
「…あー…林間学校行きたかった…」
「あははっ、これ見ると納得」
「こういうの見ると彼氏欲しいなあって思うよね」
「「は?」」
「……え、おかしなこと言ったかな…?」
「嘘よね、凛月がそんな事言うわけないわよ」
「なんで!?私も普通の女の子だよ!?」
「それならなんで晶君振っちゃったかなぁ〜」
「あ、あれは…ほら……ね…。仕方ないじゃ〜ん!」
「はいはい。どーせ月宮ルカなら彼氏の100や200簡単に作れますよね〜だ」
「そんなに要らないよ!?私結構尽くすタイプのつもりなんだけどな…」
「…てかさ、彼氏いた事あるの?あ、そもそもルカって処女?」
「えっ?うん…」
「そういうサラは?」
「……処女だけど…。レイは?」
「アタシも……。ね、この話やめよっか」
「「そうだね」」
恋愛経験ないほうかアイドルっぽいしさ、うん。
別にモテない訳じゃないんだしさ、うん。
……恋愛したいなぁ…。
後から確認したが、私の所にもクラスのグループラインで同じ写真が送られていた。
◆◆◆
そこはとある温泉旅館。
貸し切り状態の大きな露天風呂。
「家族水入らずで温泉って…初めてかしら。そもそも温泉が久々…」
「あー…私もそうだわ」
「……大体お姉のせいじゃ…」
「…私が悪いの?」
「あんたが大人しく大翔君とくっついてれば良かったの」
「やっと仲直りしたの、良かったわ〜…。お父さんも機嫌いいし」
「九割くらい真さんのお陰だけど…」
妹の汐織からはずっとあの人、とかこの人、と呼ばれていたが、最近になってお姉、と呼ばれるように変わった。
それもまた、彼のお陰だが。
「あー…汐織の勉強見てくれてる人だっけ。その子、頭良いんでしょ?」
「真よりも成績が良い人は居る。それこそ、大翔とか私とか」
「…お姉と比べないで。人に物を教えるとかできないでしょ」
「それこそ真と一緒にしないで。あんな、なんでもできる器用万能と」
「……真さんに振られたくせに」
「あっ…止めて!言わないで!」
「えっ?何アンタ、大翔君差し置いて告白したわけ…!?」
「差し置いてない。眼の前で振られた」
言わなくても良い事を遠慮もなく淡々と並べていく妹を睨みつける。
「何をどうしたらそうなるわけ…?」
「…お姉が説明しないなら私が…」
「分かった、分かった!説明する!」
彼と初めて話をしたゴールデンウィークにあった親睦会から、体育祭、誕生日についてかなり詳細に話していく。
全て話し終わる頃には、一緒に来ていた福島一家と部屋で合流して、豪華な夕食を食べていた。
「……あー…あのシャトルラン凄かった子かぁ…」
大翔のお父さん、
「…お兄ちゃんに冷たくなったのってそんな理由だったんだ…」
「…夜空、アンタその子にちゃんと感謝しないとダメよ?」
姉である
「私が振られたのに…?」
「アンタと大翔の面倒なことになってる関係に首突っ込んで仲裁したのよ?第三者だから気づけた事もあるんだろうけど、わざわざそこまでやってくれる人まず居ないって」
そう言われればそうなのかも知れない。彼は優しいから、見てられなかっただけだろうけど。
ふと、私と大翔のスマホに同時に通知が来た。
グループライン…写真?
「あ、こいつだよ、間宮真」
大翔が送られてきた写真をみんなに見せた。
大きなキャンプファイヤーを背景にして、100人くらいが楽しそうに集まっている写真。
真ん中には明らかに出来立てのカップル。
先輩やクラスメイト達が集まる中で、カップルの隣でマグカップを持っているのが真だ。
「これ」
「「「女の子…?」」」
「いやいや、男だ」
「…これで?」
「男だ、間違いなく…多分。てか体育祭で見ただろ?」
「…遠目だったから顔までは良く分からなかったなあ」
「…てかお姉、この写真なんで真ん中にカップル居るの?」
「それはこのキャンプファイヤーに『キャンプファイヤーの側で告白すると必ず成功する』っていうありきたりなジンクスがかるからで…」
「…てことはこれ成功してこうなってんのか?」
「そうだと思う」
「ふーん…じゃあ真さんも彼女できたかもね」
「……や、流石にねえだろ…」
「私のこと振っといて彼女できたとか言ったら流石に…」
「…お話聞いた限り、その間宮さんは夜空さんとお兄ちゃんをくっつける為に動いてますけどね」
「「……えっ?」」
唯華の言葉の後、私と大翔の声が部屋の中に響いた。
そして私と大翔以外は皆、呆れたように首を振った。
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