第30話 才能人
ゴールデンウィークが終わると、すぐに中間テスト。
俺はというと、夜空と福島兄妹と行った舞台以降は毎日のように二ノ宮クロエのところへ通って日本語の勉強を手伝っていた。
自分の勉強?
やってないに決まってるだろ、中学の頃から学習スタイル変わってないんだよ。
中学と違って、科目の細分化がされていたり覚える事が多かったり、本来なら勉強時間を増やすんだろうが…生憎と元々勉強時間なんて無いので増やすもクソもない。
何故か自分のじゃなくて他人の勉強ばっかり見てる。
部活終わりの達也に英語教えたり、偶然会った真冬に数学教えたり、児童保護施設に言ってクロエに日本語教えたり。
…あれ、意外に勉強ばっかしてんな俺…。
帰って来たら黒崎先生に料理振る舞って、夜中に美月や夜空と通話したり。
つーかさ、結構ガチでリア充じゃん俺。
ここニ、三年くらいゲーム機とか触ってない。
パソコンイジったりはしてるけど。それは今もまさに。
現在ゴールデンウィーク最終日の深夜。
「……あの、湊さん」
『んー…?』
「…なんで俺が編集の手伝いさせられてるんですか?」
SNSのクラリス
何故か湊さんが管理の手伝いをしているのだが、そこからどうしてか、俺のところにまで派生して手伝わされてる。
クラリスの3人はそんな事、知る由もないだろうけど。
『暇だろ?』
「いや、中間テスト…」
『あ、真お前大学行くの?』
急に話し変えないで下さいよ…。
「…行きますよ流石に…。今の日本、高卒じゃ不安なんで」
『…お前の場合、学歴要らないだろ。やれることも多い、コネクションも多い』
「確かに学歴無しでもできることは多いですけどね、学歴は結局あった方が良い物…でしょ」
『真面目だな…』
「いや、真面目ならゴールデンウイーク中に一回くらい勉強用の日作りますよ」
『お前、日に一回は絶対に外出するもんな。俺には絶対無理…』
「外出ると目立ちますからね、湊さんは」
童顔で美形だし、この辺りでは知り合いがかなり多いから何かと目立つらしい。
『それはお前もだろ?』
「俺の場合、慣れてるんで。あと目立ちたくない日は目立たないようにできますから。逆もできますけど」
『…本当に器用だよなお前…』
「それ湊さんが言いますか?」
『いや、俺は結構できないこと多いぞ?特に友達作るとか』
「コミュ症まだ治らないんですか…?」
編集が終わったデータを湊さんに返して、近くに置いておいたアイスココアを飲み干す。
『そういや、真は将来の事考えてるのか?』
「一応…今のところ何でしょうね?映像関係が無難だとは思ってます。勿論裏方ですけど。他でも一応、誘われてる話はありますけど…」
天音さんに「高校出たら私の秘書やらない?いや、ガチで」と言われて三、四年くらい、いまだに誘われるくらいには熱烈だけど。
『ほーん…役者はやんないのか?』
「できるとは思いますよ。やりたいとは思いませんけど」
不思議な事に身内には才能人が多い。
器用さが取り柄の俺はそんな環境で育ったお陰で、何かとできることが多い。
湊さんはできる事とできない事がハッキリしている分、できることはとことんできる天才肌。
主にテレビ業界の映像関係の仕事を“手伝っている”人。本人はフリーターを自称している。
そんな湊さんの奥さんやってる紗月さんは一般教養や家庭的な事は極まってる普通の専業主婦。実は湊さんができる事は大抵できる。
そして天才気質が極まってる「やればできるの化身」みたいな奴が凛月。何やらせてもできる。本当になんでもできるからヤバい。
いつもやる気がなくて、やる気さえあれば凛月と同じか…物によってはそれ以上に
彼女達の弟である渚は、できる事はそれこそ…凛月や美月では性別の都合からできない事を丸々出来るようにした様な天才。加えて芸術的なセンスもずば抜けて高い。感受性豊かでもある。俺や湊さんが出来る事は大抵こなせる。鷹崎家の身内では珍しく、男性的な体つきをしているので力もある。
うちの母さんはやる気はあるけど自由人で家に居たり居なかったり、いつの間にか職業変わってる事もある。急に出張とか言って海外に居たり、いつの間にか外国語を話してたりする。
そんな変な人達に育てられた俺は、基本的に誰に対しても態度を変えない身内達とは違う。
話す相手によって態度や口調、性格まで変えて話す。
“相手にとって都合のいい間宮真”を演じて話すことが多い。
これは性格ではなく、高校に入るにあたって自分が思ってるよりも口が悪くなる事があると気付いてから、意識するようになった癖みたいなものだ。
話してて面倒なやつに対しては取り繕うことを辞めたりするけど。
俺はできる事は多いし器用だとは思うが、凛月みたいにやること成すこと全てが上手く行くタイプではない。
例えば、何かの技能を習得するまでに、その技能に関する知識をある程度集めない限りその技能を習得するモチベーションがなくなる。
恐らくは凛月と美月と渚の中間に居るんだと思う。
「湊さん、こっち全部終わりです」
『おっけー…助かった』
「…じゃあ、寝ます」
『おう、おやすみ。明日のテスト頑張れよ』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます