第27話 二次会

 親睦会の二次会で、半分くらいのメンバーがカラオケに向かった。


 ファミレスに関しては貸し切りの時点で会計は済になっていた。

 …や、天音さん…。俺そこまでは頼んでないんですけど…あざす。


 その後カラオケに向かったのは福島の取り巻きハーレムメンバーと俺と達也。

 バスケ部の五十嵐と陸上部の阿部。


 女子は八割参加という、福島効果にびっくり。


 俺はタンバリンをシャカシャカしながら、本人の目の前でクラリスの曲を歌ってる三人を見ていた。


 ノリノリの学級委員長蜜里さん。この人は福島ハーレムの一人。

 いやいや参加の割には歌上手いし、声が良すぎる夜空。彼女は福島ハーレムは拒否してる。

 そして生徒会に入る予定の桜井美琴。彼女も恐らくは福島ハーレムの一人。


「今〜♪」

「この瞬間とき♪」

「煌めいて〜っ♪」

「「「クラリス!」」」

「「「「うおぉぉー!!」」」」


 盛り上がり方が半端ない。

 歌のクオリティが高い。


 部屋の入り口近くでちょっと悶えてる真冬が面白い。


 それにしてもハンドマイク持って踊りながら歌って、ライブならMCやりながらって…アイドルって体力やばいな。


「上手いじゃないか、三人とも」


 何故か自分上から目線な福島。


「ふふ…そうですかね」

「朱音はホント好きよねクラリス」

「はい。栗山さんも歌えるのは意外でしたけどね」

「………べつに…」


 照れる蜜里さんと桜井さん。

 視線を背ける夜空。

 やはり蜜里さんは夜空を少し敵視してる感じがある。桜井さんはとくに何も無さそうだけど。


 夜空の冷たい態度を照れ隠しと捉えて笑みを見せる福島に苦笑い。


 達也は少し真冬を気にして、彼女の隣に座っている。


 俺はふと気になって、近くに居た五十嵐に声をかけた。


「…ねえ、五十嵐」

「おん?なんだ?」

「クラリスってそんなに人気なの?」

「おまっ…達也の友達のくせに知らねえのかよ?」

「いや、なんか好きなのは伝わってくるけど…」

「ライブ見たことはあるか?」

「生では無いかな」


 正直なところ、凛月とか真冬とか知り合いが居るから見てる感あるんだよな。

 プライベートで三人と会った事はあるけど、そっちの印象の方が俺は強く感じている。


「勿体無えな〜…絶対に一回は見に行ったほうが良いぞ生ライブ」

「…そもそもなんで人気なの?」

「映像なら見たことあんだろ?なら分かれよ」


 分からない訳じゃないけど、一旦は世間の評価が聞きたい。


「…顔がいい…とか?」

「確かに三人とも他のグループでもセンター張れる完璧なルックスしてるけど、まずダンスのレベルが超高えのよ。そのお陰でいい意味でアイドルっぽさが少ないからまず入りやすい。そんで抜群に歌が上手い、ソロパートで誰も見劣りしないのは大事だ。あとはやっぱり月宮ルカの存在だな。あれはもう、言う事無しだ」


 オタクかな?早口過ぎるだろ。


「へ、へえ…そう、なんだ…やっぱり月宮ルカって凄いの?」

「まずルックスが神。聞くにあの銀髪は地毛だって噂もある。テレビ関係者の話じゃあ…性格は、天真爛漫、身体能力は抜群で頭もかなり良いらしい。礼儀正しく素行が良くて、天才気質で適度に自身がある。芯が強く流されすぎないのも良いところらしい」

「………へぇ…」


 この月宮ルカの早口オタク…どうにかしてくんねえかな。

 完全に話しかける相手を間違えたんだけど。


 いや、そもそも話題を間違えたな。月宮ルカというか、凛月が完璧超人なのは今に始まったことでもない。物心ついた頃からそうだった気がする。


 …まあ、俺か湊さんが絡んだ瞬間にポンコツ化する変な奴だけど。


「…それだけじゃない…月宮ルカは…」


 あ、コイツ放っておこう。だめだもう、俺の幼馴染に色々壊されちゃってる。


 湊さんもまさかここまで人気を博すとは思ってなかったんじゃないだろうか。


 偶には凛月と二人でどっか行くのも…あ、でも週刊誌に付け回されてるとかあるのかな。


 流れる曲のリズムに対して条件反射でタンバリンを鳴らしていると、どことなく音痴で微妙な阿部の歌が聞こえてくる。


「…聴くにたえねえぞ…」

「五十嵐、思っても言わない方が良いよそういう事は…」

「…おー…福島がフォローで全部持ってった…。アイツ歌も上手いの反則だろ。欠点ねえのかよ」


 欠点はあるだろ。


 鈍感で難聴で浮気性なところとか。

 無自覚ハイスペックで周りの人間全員見下してるところとか。


「…まあ結局のところ、自覚ないから考えても無駄だけどな」


 俺は間違って頼んだソーダをチビチビと飲みながら、皆の歌を聴いて楽しんだ。


「…炭酸飲めねえのに…」

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