アメリカのウェストヴァージニア州から希望峰を経由して空路でやってきた木星を故郷とするフラッドウッズモンスターで

「とっ、とにかく、そんな危ない競技地球でやらないでもらえる……?」


 どんな競技なのか見たい思いは山々だけど命あっての物種だ。


「大丈夫ですわ、地球用ルールで行いますから」


「そうですね。地球用ルールなら最悪でも大陸が一つ沈む程度でしょう」


「いやいやいや、めちゃくちゃ危ないじゃん!」


  想像できないからあんまりよく分かんないけど、大陸が沈んだら大変なことになる気がする!


「大丈夫ですわまさし。地球に大陸が何個あるか知ってまして?」


「分かんないけど……?」


「六個ですわ。それなら一つくらいなくなっても問題ありませんでしょう?」


「大ありじゃない……?」


 六個のうち一個なくなるということは、そのなくなる大陸に思い入れがある人はとても悲しい思いをしてしまうと思う。それはとても悲しいことだ。


「まさしさん。ロシアンルーレットだと思ってもらえれば、そんなに危なくないと理解できると思います」


 メインちゃんの言葉にうなずく。


「っ! なるほどね! そう聞くとなんか大丈夫な気がしてきた!」


 六分の一ならそんなに危なくないか!

 なんでも心配しすぎるのはよくないよね! 

 それよりも今は宇宙蹴鞠がどんなものなのか見てみたい!


「ですが……宇宙蹴鞠をするためには、儀式を行わなければなりませんの……」


「儀式?」


「はい。宇宙蹴鞠は偉大なる大宇宙神ビッグコスモに捧げる神事。始める前には必ず男尻円舞曲だんじりワルツを奉納しなければなりません」


「だんじりわるつ……?」


 あまりの意味不明な響きに首をかしげる。


「ええ、名のとおり、選ばれし筋骨隆々きんこつりゅうりゅうの男たち61人が二人一組の計30組となって、ふんどし一丁でショパンの華麗なる大円舞曲のメロディーに合わせて「ぷてらのどん! ぷてらのどん!」と叫びながら互いのふんどしに手を回しつつワルツを舞い、先に相手のふんどしを下ろした方が勝ち。というものですわ」


「なにその地獄絵図? というか一人余ってない?」


「ですが地球には男尻ダンジリストがいませんよ?」


「だんじりすと……?」


「仕方ありまんわね……。こうなったら、まさしにやってもらうしかないですわ」


「そうですね。まさしさん、お願いできますか?」


「えっ、イヤだけど? そもそも僕一人だけじゃどうしようもないでしょ?」



「俺の出番かな?」



「宇宙人おじさん!」


 ふんどし一丁の宇宙人おじさんが現れた!


「あとはまさしだけですわね!」

「お願いしますまさしさん!」


「なんで二人とも急に現れたふんどし一丁のおじさんに疑問を抱かないの? まぁいいよ? 二人がいいなら僕もいいけどさ、61人30組じゃなきゃダメなんだよね? 数足りなくない?」


「いえ、30÷30は1なので大丈夫です!」


「えっ? う、うん。そうだね……?」


 メインちゃんの押しに負ける。


「分かったなら、早くこれをはきなさいですわ!」


 レイちゃんからふんどしを手渡される。


「イヤだなぁ……だいたいふんどしのはき方なんて分からないし……」


「大丈夫ですわ。宇宙ふんどしを舐めないでくださいまし。それを両手に持って空高く掲げ、装着! と、腹の底から叫ぶんですわ」


「おおっ、なんかかっこいいね!」


 初めて宇宙文明のスゴさを感じられそうだ。


 ふんどしを空高く掲げ腹の底から叫ぶ。



「そうっちゃぁぁぁあーっくッッッッ!!!!」



 しかしなにも起こらない。


「はきたい気分になったでしょう?」


「装着されないんかい!! なってないよ!! 宇宙関係ないし!!」


「おいおい大丈夫か? ほら、ふんどしの締め方分からないならおじさんが締めてやるからよ」


「あっ、大丈夫っす、検索するんで……」



 おじさんが僕のズボンに手をかけようとしたからやんわり断って部屋に戻ってふんどしを着け、三人のところに戻った。


「揃いましたね! では始めましょう!」


「そうですわね、進行は任せますわ、メイン」


「もう好きにして……」


 ふんどし一丁で相対あいたいする僕と宇宙人おじさん。


「これで音楽を流します!」

「ラジカセっ?!」


 ガチャ、ウィーン――


【へっへっへ……へっ……げっへっへっへっ……あっ……はい! げっへへへ……あっはい! はい! へっへっへっ……あっはい!】


「…………」

「…………」

「…………」

「おっとこっちはB面でした」

「今のなんだったの?!」


 メインちゃんがカセットを裏返してセットし直すと、ショパンの華麗なる大円舞曲らしき曲が流れる。



「では両者、見合って! ハジメッ!!」



「ぷてらのどんっ、ぷてらのどんっ」


 よく分からないけど、言われたとおりおじさんに組み付いてふんどしに手をかける。


「ぷてらのどん! ぷてらのどん!」


 おじさんも僕のふんどしを掴む。


「まさし! ちゃんと気合を入れるんですわ!」


「まさしさん! 神事でふざけたらいけませんよ!」


「うぅっ……! ぷてらのどん! ぷてらのどん!」


 宇宙人のおじさんと互いのふんどしを下ろすためくんずほぐれつする。

 汗のせいなのかおじさんの肌はぬるっとしていた。あとなんかクサい……。


「ううっクサいよぉ……気持ち悪いよぉ……」


 なんでこんなことしなきゃいけないんだ……? 僕はただ宇宙蹴鞠が見たかっただけなのに……。


「ぷてらのどん! ぷてらのどん!」


 おじさんはノリノリだ。


「まさし! 声が小さいですわよ! やる気あるんですの!?」


「まさしさん! 本気でお願いします!!」


 ガヤされ半ばヤケになる。


「ああああっもうっ!! ぷってらのどん!! ぷってらのどん!!!!」


「なんて芯に響くぷてらのどんコール……これはティラノ……いえ、モササウルス級ですね――」


「分かりづらいよ!」


「まさし! 褒められたからってよそ見するんじゃないですわ! そんなチンタラコールじゃ恐竜も草葉の陰で泣いてますわよ!」


「絶滅の原因が言うセリフかっ!? 不謹慎だなぁ(怒)!!」



 がっぷり四つに組み合ってぷてらのどんを叫び合い互いのふんどしを下ろそうとする僕とおじさん。



「うぉおおおおお!! ぷってっらっのっどんっ!!」


 気合でおじさんのふんどしを下ろした。


「見事だ、少年!」


 全裸でサムズアップを決める宇宙人おじさん。


「キャー!!」

「この変態!!」


 何故か二人からバッシングを受ける僕。

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