第9話 ユキとリリスの関係
屋敷に戻ると、リビングのような場所に案内された。リビングもまた無機質ではあったが、所々に飾り付けが見られる。おそらく、これはユキの手によるものなのだろう。
「私がいつも飲んでる紅茶で良い?」
「ありがとう、それで良いよ。」
そう伝えると、ユキは慣れた様子でリビングの奥にある、キッチンらしき場所へと足を運んでいった。
しばらくして、紅茶を二つ手に持ったユキが、リビングに戻ってきた。
「はい、熱いから気をつけてね。」
「ありがとう。」
お礼を言って受け取る。紅茶は良い香りがしていて、美味しそうだった。
「リリスっていつもあんな風に無表情なのか?」
何となく、時間つぶしにと会話を振ってみる。地味に気になっていた事なのだ、リリスは本当に親しい人の前だと笑うといったようなことがないのか。
「リリスはいつもあんな感じよ。まあ、慣れてくると、何となく感情が読み取れるようになるんだけど。」
「ユキとリリスは長い付き合いみたいだけど、どのくらいなんだ?」
「どのくらいだったかな…。多分十年くらいじゃない。」
あっけらかんと言った。十年というと、最早家族みたいなものではないか。その時、当然の疑問としてリリスとユキの親はどうしているのだろうかというものが浮かんだが、あまり踏み込んで良い話とも思えなかったので、聞くのは躊躇った。
「仲が良いんだな。」
「まあ、腐れ縁みたいなものだけどね。」
そう言って、ユキは紅茶を口にした。それに倣って俺も紅茶を口にする。芳醇な香りが口に広がるように感じられた。
「…ユキは、魔法使いって話だったけど、生まれたときからそうだったのか?」
「私の場合は、後天的なもの。ちょっときっかけがあって、魔法使いになったのよ。」
ユキは少し寂しげな、どこか遠くを見つめるような目をしながら、そう言った。
俺は、その顔になんて言葉を返して良いのか分らなかった。何を言っても無粋になるような気がしたのだ。
沈黙が屋敷のリビングを覆った。会話を止めると、驚くほど静かだった。ただ、壁に掛かっている時計の音だけがいやに大きく耳に響いた。
何か別の話題でも、と思っていると、リビングの扉が開かれた。
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