第4話 こうして始まる屋敷での生活
「色々と説明してくれて、ありがとな。それで、聞いておきたいんだけど、俺はいつまでこのお屋敷に留まることができるんだ?正直、行くあてもないから、できるだけ長く滞在させてくれるとありがたいんだが…。」
「とりあえず、そんな大怪我をした状態のまま外に放り出すなんて、外道じみた真似はしないよ。それに、君は大切な魔法使いの命の恩人でもあるわけだしね。君の望みは大抵叶えてあげるつもりだよ。」
「大抵叶えてあげるって、あまりに大げさじゃないか?俺はそういうの本当に遠慮しないタイプだぞ。」
「何でも望むと良い。それくらい君の功績は大きいんだ。さっきも言ったろう、魔法使いというのは超常の力を操ることのできる、この世界に五人しかいない希少な存在だって。魔法使いの損失は世界の損失だからね。」
どうやら偶々助けた少女が、この世界の財産とも言えるような存在だったらしい。急に、いつもの日常生活を奪われたのは、あまりにも不幸ではあるが、そんな中でも、幸福なことは起こるみたいだ。
状況は悪いが、最悪というわけでもない。それなら、これからこの世界でも何とかやっていけそうだ。
「というわけで、一旦私はこれで失礼させてもらうよ。また、分らないことがあれば遠慮無く聞いてくれ。」
「何から何まで悪いな、リリス。」
「気にすることはない。…あー、そういえば伝え忘れていたことが一つあった。」
リリスは最後まで無表情のまま、人差し指を一本立てた。
「君はしばらくこの屋敷に滞在することになると思うが、この屋敷では守ってもらいたいことが一つある。それは私か同居人の付き添いなしにこの部屋から外に出ないことだ。一応、シャワーとトイレについては部屋に備え付けてあるので、それで我慢してもらいたい。」
「一応、理由って聞いても良いか?」
「勘違いしないでくれ、君を疑っている訳じゃないんだ。ただ、この屋敷には様々な魔道具のトラップが訳あって仕掛けてあってね。不用意に触れると、命を落としかねない物が多くある。君の安全面を考慮してのことだよ。一応、私や同居人が持っている魔道具があればトラップは動作しないのだが。生憎と余計に作っていなくてね。近いうちに作るつもりではあるが、それまでこの約束は守って欲しい。」
至極丁寧に、俺が何故軟禁状態にあるのかを説明してくれた。このリリスという少女とは短時間しか会話をしていないが、どうやら悪い人物ではないようだ。常に無表情なのが、少し不気味で玉に瑕ではあるが。
「分った、食事はこの部屋で待ってれば良いか?」
「ああ、三食、私か同居人が届けるよ。一応聞いておくが、苦手な食べ物はあるかい?」
「大丈夫だ。割と何でも食べれる。」
「そうか、それなら良かった。では、傷が開かないように安静にしているんだよ。」
そう言って、リリスは今度こそ部屋を出て行った。急に静かになった部屋は少しもの悲しく感じた。
特にやることもないので、一刻も早く傷を癒やすために、再び眠ることにした。
今さら気づいたが、ベッドの寝心地はこの上ないほど良かった。確かに、これでは三日間寝続けてもおかしくない。そう思い、目を閉じた。
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