第8話 姉の話
朝学校に登校すると、俺の席にある机に体の重心を置いて、スマホを弄っている波澄の姿があった。
「波澄、おはよう」
席に座った俺は、学生鞄を机の上に置いてそう返事をした。
「ん、おはよ繋義」
俺が来たことを知ると、波澄はすぐにスマホを閉じて、俺の机に体の重心を置くのをやめて俺と向き合った。
「何かしてたなら、俺に構わずスマホを続けていい」
「ううん、お姉ちゃんからメッセージ飛んできて軽く返信返してただけで、今ちょうど終わったところだったから」
そういえば波澄の家族事情というものは今まで全然知らなかったが、どうやら波澄にはお姉さんが居るらしい。
「お姉さんが居たのか、二人姉妹なのか?」
「うん、そう」
「俺にも姉さんが一人居るから、同じだな」
「お姉ちゃんが居るのは一緒だけど、誰も彼もが繋義のお姉さんみたいに優しいわけじゃないよ、私のお姉ちゃんも全然優しくないし」
「でも、朝からメッセージしてくれるって、結構優しいお姉さんなんじゃないのか?」
「全然だよ、見た目と料理の腕だけに全部のステータス振ったみたいな人だから、さっきのメッセージもそうだけど、たまに私に似合う服とか教えてくれるぐらいで、それ以外は本当に私にとって良いところない」
波澄はお姉さんのことをあまり好ましく思っていないようだが、それでも見た目と料理の腕だけは認めているらしい。
「波澄のお姉さんってことは、そのお姉さんもオシャレで容姿が整ってる人っていうことは簡単に想像できるな」
「っ……!それ、私のことオシャレで容姿が整ってるって言ってるのと同じに聞こえるからやめた方がいいよ」
「え?その通りだけど」
「そ……そう」
俺の言った言葉の意味を理解しているのに、やめた方がいい……?
波澄の言動が少し理解できなかったが、波澄の表情がどこか明るく見えることから、何か悪いことを言ってしまったわけではないことがわかるため、俺は気にしないことにした。
「波澄のお姉さん、いつか会える機会があると良いな」
「そんなのない方が良いよ、繋義のお姉さんは清楚な感じだけど、私のお姉ちゃんは真逆……だから、絶対繋義には会わせない」
波澄から強い何かを感じたため、俺はそれ以上波澄のお姉さんの話をするのはやめておいた……仲が悪いというわけではなさそうだが、良いというわけでもないようだ。
「そうだ、姉さんって言えば……波澄、もし今日放課後空いてたら時間くれないか?」
「え……?放課後……?一緒にどこか行くって話?」
「そう」
俺がそれを肯定すると、波澄は頬を染めて、オシャレなピアスを弄りながら言った。
「良いけど……放課後一緒に出かけるとか初めてだよね、どこ行くの?」
「前から思ってたんだけど、日頃から姉さんにはお世話になってるからサプライズで何かプレゼントしたいと思ったんだ……でも、俺だけだと姉さんが何に喜んでくれるのかわからないから、波澄にも手伝ってほしいと思って」
「あぁ……そういうことね」
すると波澄は、ピアスを弄るのをやめると俺に言った。
「それなら、何か買ったりする必要は無いと思うよ」
「え……?何も買わずに、どうやってサプライズするんだ?」
「繋義は物をプレゼントするのが目的じゃなくて、日頃の感謝を伝えて、喜んでもらうのが目的なんでしょ?感謝の気持ちよりも物をもらった方が嬉しいって人も居るけど、繋義のお姉さんは絶対感謝の気持ちの方が嬉しいって言うと思うよ」
「俺も、姉さんは物の有無で喜ぶかどうかを決めたりしないことはわかってる……でも、それだけだと俺が物足りないんだ」
「物をあげないサプライズだっていっぱいあるよ……例えば────」
俺は、波澄から物をプレゼントしないサプライズ方法をいくつか教えてもらった……それらは全てが、思いつきそうなことではあったがプレゼントしないといけないという固定概念に縛られていた俺にとっては、どれもが教えてもらってありがたいことだった。
「ありがとう波澄、おかげで姉さんが喜んでくれそうだ」
「この前繋義には弱音聞いてもらったから、そのお返し」
「だとしても、ありがとう」
波澄に素直な感謝の気持ちを伝えた。
……その数秒後、波澄が小さい声で俺の名前をよんだ。
「……繋義」
「なんだ?」
俺がそう聞き返すと、波澄は何故か俺から顔を逸らして言った。
「今回は流れちゃったけど、今度……一緒にどっか行こうよ」
「あぁ、わかった、俺も考えとくけど、行きたいところがあったらどこでも教えてくれ」
「っ……!……うん、ありがと」
その後、今日も問題無く学校で一日を過ごし────放課後、俺は姉さんに日頃の感謝を伝えるべく、姉さんにサプライズすることにした。
◇
この作品が連載され始めてから一週間が経過しました!
ありがたいことにこの作品は【ラブコメ日間ランキング3位】と【ラブコメ週間ランキング7位】になっていて、毎話ごとに日を追って読んでくださっている皆様や、一気に読み進めてくださっている皆様にも感謝しかありません!
この作品を読んでいて楽しいと思ってくださっている方が居たら、その気持ちをいいねや☆、コメントなどのどんな方法でも良いので、教えていただけたらとても嬉しいです。
また、今後も楽しくこの物語を描かせていただこうと思いますので、読者の皆様もこの物語を楽しんでくださると幸いです!
◇
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