ブラコンな姉が実は義姉だったと俺だけが知ってしまい、隠そうとしたがすぐにバレてしまって姉さんが手に負えなくなった件

神月

プロローグ

第1話 姉さんの夢

つむぐ〜!」


 帰宅早々、俺……つなつむぐの名前を呼んで俺のことを出迎えてくれたのは俺の彼女────ではなく。

 長い黒髪に整った顔立ち、出るところはしっかりと出ていて容姿の優れた女性……名前はつなのぞ、俺の姉だ。


「おかえり、今日は遅かったね?」

「友達と遊んでた」

「そっか、友達と遊ぶのは良いことだよね……あと少しでご飯できるけど、すぐに食べる?それともお風呂入ってからにする?」

「もう少しでできるってことなら、冷めない間に食べたいから先にご飯食べるよ」

「いつからそんな言葉選びが上手になったの〜?そんなこと同級生の女の子とかに言って……ないよね?」


 姉さんは、最後の部分だけ声を小さくして不安そうに聞いてきた。


「言ってないよ」

「なら良いんだけどね〜!」


 姉さんはご機嫌そうにリビングを通ってキッチンの方に歩いて行った。

 そもそも姉さん以外の、それも同級生の女の子にご飯を作ってもらう機会なんて無いからそんなこと言う機会があるわけないのに、姉さんは突然どうしたんだろう。

 そんなことを思いながら靴を脱いで玄関に上がり、リビングで姉さんがご飯を作り終えるのを待つこと五分。


「今日はカレーライスだよ〜」

「ありがとう」


 俺と姉さんは同じテーブルの席に着くと、一緒にそのカレーライスを食べ始めた。


「カレーライス美味しい?」

「うん、ありがとう姉さん」


 姉さんは基本的にスペックが高い。

 勉強、運動、家事、どれを取っても非をあげることはできなくて、強いて言うなら高校三年生になっても弟離れがあまりできていないことぐらいだが、それも仲が悪いよりは良いだろうし、弟思いと受け取れば良いことだと思える。


「……私、紡と同じ年齢が良かったな〜、そしたら一緒に高校卒業してあげられるのに、留年しちゃおっかな」

「それはまた、いつにも増してすごいことを……姉さんにはそろそろ良い人が現れてくれると良いんだけど」


 そのせいで弟思いが無くなるなら少し思うところはあるが、それでも姉さんが幸せになってくれるならそれが一番だ。

 そして、幸せと言われて想像する形は人それぞれだと思うが、俺は咄嗟に思いついたのが一緒に居て幸せな人と将来幸せに暮らすことだったため、そんなことを口にした……けど、姉さんの表情はどこか暗い。


「姉さん?」

「……変わらないといけないってわかってても、やっぱり人は簡単には変われないね、望んだらいけないと知ってても気づいたら望んじゃってる」

「望む……?」

「今まで秘密にしてたけど、お姉ちゃんの夢……紡にだけは特別に教えてあげる……こんなこと言ったら驚いちゃうかもしれないけどね」

「姉さんの夢なら、俺が応援しないわけない、何?」

「────私の夢は、紡と二人で幸せになることだよ」


 姉さんは胸に手を置いてそう言った。

 そのことからも、その夢がとても大事なことであることは窺い知ることができる。


「最初から実ることの無い夢だってわかってるんだけどね」


 そう言いながら、姉さんは物悲しそうな表情をした。

 実ることの無い夢……?

 姉さんのその言葉に、俺は疑問を持った。

 どうして実ることが無いんだろう、将来姉さんと幸せな未来を生きている可能性は十分あるのに。


「俺たちが二人で幸せになる可能性なんていくらでもあると思う、だからそんなに悲観的にならずに、協力して生きていこう……俺たちは兄弟なんだから」

「……うん、そうだよね」


 姉さんは微笑んだ。

 だが、その微笑みはどこか諦めのような雰囲気を感じさせた。


「ごめんね?私のせいで変な空気にしちゃって、せっかく紡が美味しいって言ってくれたカレーライスが冷めちゃうといけないから、早く食べないとね」

「あぁ、うん」


 その後、俺と姉さんはいつも通りの空気に戻って、楽しく雑談をしながら美味しいカレーライスを完食した。

 そして食器を片付けている最中、姉さんが俺に静かな声で言った。


「紡……私、お姉ちゃんとして頑張るから、何かあったらいつでも私のこと頼ってね……お姉ちゃんとして、頑張るから」

「言われなくても、いつも頼りにしてるよ姉さん」

「……うん」


 そして、その日はやるべきことを済ませると眠りに入った。

 ……今日の姉さんは少し様子がおかしかったけど、たまにはそんなこともあるだろう。

 次の日の朝にはきっと────


「ほらほら!私がネクタイ締めてあげるから!」

「い、いいって、そのぐらい自分でできるから、あと近い」

「血の繋がった家族で、二人だけの姉弟なんだからそんなこと気にしないの!」


 姉さんはその服を着ていても隠せないほどの大きさの胸元を容赦なく押し当ててきながら、俺の制服のネクタイを締め始めた。

 元通りになってくれたのは嬉しいが、ここまで元通りになられるのも考えものだ……血の繋がった姉に不純な感情を抱いたりはしないが、それでも高校二年生という思春期の頂のような時期にいる俺には、いささか思うところがあった。

 もし姉さんが血の繋がった兄弟で無かったとしたら、今頃どれだけ感情を乱されていたかわからない。

 そう考えると、姉さんと血の繋がった兄弟で良かったのかもしれない。

 もし姉さんと血が繋がっていなかったとしたら、俺は────



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