第9話 アメリアさんは僕を離さない

「…。」

「…。」

お父さんが居なくなったリビングでアメリアさんとソファに座る。


すると突然抱きしめられた。

「ごめんなさい」

「アメリアさん?」

「今まであの状況なのに君を守ることが出来なくて」

「アメリアさんは何も悪くないよ。僕ドジだから、やることなすこと全部空回りしちゃうからさ…あはは」

と言うがアメリアさんは僕に優しい眼差しを向ける。


「辛かったら声に出さないと」

「辛くなんかないよ。僕がちゃんと結果を残せばきっと…」

きっとあの人達も僕に優しくなる。

そう思っている。


「強がってない?」

「強がってなんか…ないよ。というかアメリアさんはどうして僕に構うの?」

まただ。こういうネガティブなことを言うからダメなんだ。


「僕なんかよりかっこいい人たくさんいるじゃん」

「そんなことない。私は尚くんにしかない魅力もあると思うよ」

「完璧なアメリアさんには僕の気持ちなんて分かるはずがないんだよ…」

とうつむく。

アメリアさんの顔なんか見れない。


こんなやつさっさと捨てればいいんだよ…。

昔もそうだった。近寄って来る人はいたけど全て親のせいで関係が崩れていった。


「そんな卑屈になっちゃダメだよ。助けて欲しい時は素直に「助けて」って言わないと」

「そんなこと…」

「私の前では強がらなくていいんだよ?」

「…!」

泣いてる…?そんなこと…

視界がぼやける。


気づけばアメリアさんを抱きしめて泣いていた。

「大丈夫。私は君を捨てたりなんかしない」

と背中をさすられる。


ずっと1人で辛かった。誰にも頼ることが出来なかった。


「助けて…アメリアさん…」

「任せて」

そう言ったアメリアさんは世界で1番かっこよかった。


「ほら、泣き止んで。さっさとこんな家出ていこう?」

「でも僕他に住める場所なんて…」

祖父母の家は知らない。両親が会わせてくれなかったから生きてるかどうか、どこに住んでるのかも分からない。


「あるじゃない居場所」

「え?」

「私の家行こう?」

「いいの?アメリアさんのお父さんに迷惑かけちゃうよ…」

アメリアさんが良くてもあのちょっと怖そうな人は許してくれるかどうか分からない。

しかも親は政府の官僚。殺し屋が関わると面倒な相手でしかないと思った。


「私が言ってあるから遠慮しないの」

アメリアさんは僕の手を取って

「行くよ?」

「うん」

僕をこの家という檻から連れ出してくれた。


さっきの黒い車がちょうど家の前で止まり、

「どうぞ」

「ありがとう」

また乗せられる。


そしてアメリアさんの家に着いた。

「家結構遠かったんだね」

「そうだね。でももうあの家は気にする必要ないよ」

「ねぇアメリアさん」

「うん?」

「僕、親に怒られないかな」

意気地無しだからカンカンに怒ったお父さんが僕を探し出して…というのを容易に考えられる。


アメリアさんを握っている手が震える。

「尚くんに助けてって言われたからには全力で守るから安心して。私これでも殺し屋だから」

ふふと笑って言う。自信に満ち溢れているアメリアさんは少し可愛くも思えた。


「ありがとう」

涙で目が腫れて情けないところばかり見せているけど感謝の気持ちはしっかり伝える。

「…!。え、ええ。さ、家に入りましょ」

「うん」



この時、僕は理解していなかった。

アメリアさんと「同棲」していることになっているとは。



《読んでいただきありがとうございました。少し暗い内容に思えたかもしれませんが次回からはちゃんとラブコメになります。次回は視点別でアメリアさんの視点で書かれています。お楽しみに(*^^*)

良かったら星☆や応援コメントをしてくださると嬉しいです》




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