答え
「でもそれって、リフティングしてる人は生首じゃなかったんだよ」
「そしたら俺じゃないなぁ」
目が覚めて、夢の中の出来事を報告すると塚元くんは楽しそうに目を細めた。言ってる事がおかしい。塚元くんはもう生首として自分を認識している。これで良いのかなぁ、という疑問が頭を掠めていく。
とりあえず顔を洗って化粧をして朝の紅茶を淹れる。モーニング・ブレック・ファーストという名前の、そこそこフレッシュな香りのするブレンドティーはなかなか気に入っている。塚元くんからも評判はよく、ストローを使って美味しそうに飲んでいる。
もうじき師走がやって来る。近所の商店街では早くも歳末セールの準備に余念がないし、仕事もそろそろ年末進行の気配が出てきている。今年は賑やかな年末になるのかも知れない。塚元くんもいるし、もしかしたら美咲も、彼と一緒に遊びに来るかも知れない。何を用意しようか。お節、という感じでもないし、皆んなで鍋か焼肉でも。そしたらホットプレートとか、そういうのが必要かもしれな。
「でもさぁ、もしかしたらコッチが夢かも知れないとは思わないか?」
膨らみ続ける想像に、けれど塚元くんは異を唱えた。何を言ってるのか。そんな。まさか。私は全力で否定の答えを口にする。
「そんなこと、ある訳ないでしょ」
自分の声で目が覚めた。
部屋の中は不思議にしんと静まりかえり、薄青い光に満ちている。飛び起きると朝だった。部屋の外でハクセキレイがチチチと鳴いた。
塚元くんの姿は、部屋のどこにも見当たらなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます