答え

「でもそれって、リフティングしてる人は生首じゃなかったんだよ」

「そしたら俺じゃないなぁ」


 目が覚めて、夢の中の出来事を報告すると塚元くんは楽しそうに目を細めた。言ってる事がおかしい。塚元くんはもう生首として自分を認識している。これで良いのかなぁ、という疑問が頭を掠めていく。

 とりあえず顔を洗って化粧をして朝の紅茶を淹れる。モーニング・ブレック・ファーストという名前の、そこそこフレッシュな香りのするブレンドティーはなかなか気に入っている。塚元くんからも評判はよく、ストローを使って美味しそうに飲んでいる。

 もうじき師走がやって来る。近所の商店街では早くも歳末セールの準備に余念がないし、仕事もそろそろ年末進行の気配が出てきている。今年は賑やかな年末になるのかも知れない。塚元くんもいるし、もしかしたら美咲も、彼と一緒に遊びに来るかも知れない。何を用意しようか。お節、という感じでもないし、皆んなで鍋か焼肉でも。そしたらホットプレートとか、そういうのが必要かもしれな。


「でもさぁ、もしかしたらコッチが夢かも知れないとは思わないか?」


 膨らみ続ける想像に、けれど塚元くんは異を唱えた。何を言ってるのか。そんな。まさか。私は全力で否定の答えを口にする。


「そんなこと、ある訳ないでしょ」


 自分の声で目が覚めた。

 部屋の中は不思議にしんと静まりかえり、薄青い光に満ちている。飛び起きると朝だった。部屋の外でハクセキレイがチチチと鳴いた。

 塚元くんの姿は、部屋のどこにも見当たらなかった。

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