来る

「あした、来客があるよ」

 仕事から帰ってそう告げると、塚元くんは少し黙ってから「そうか」と明るめの声を出した。

「そしたら俺、クローゼット辺りに居るよ」

「何その間男ムーブ」

 私が笑うのと反対に塚元くんは眉を顰める。

「だって。マズイだろ、部屋に生首があっちゃ」

「塚元くんも知ってる人だよ」

「……俺が?」


 昼休みに美咲に連絡を取ると、案外と軽い感じで会うことが決まった。暇していたのかも知れないし、単に気が向いただけか、学生の頃のまますくすくと育っているだけかも知れない。

 塚元くんは黙って窓の方に視線を向けている。

「来るよ、あした」

 もう一度歌うように言葉にしたけれど、それはひどく虚しく響いただけだった。

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