つぎはぎ

 私の修学旅行の記憶は、美咲に関する記憶と同じ場所にしまってある。修学旅行の事を思い出そうとする時、ハンバーガー屋さんで多過ぎるとは分かっていてもついつい頼んでしまうセットのように、美咲の事も思い出してしまう。

 美咲は華のある女子生徒で、いつでも周りに人がいた。それでいて奢ることもなく、遠巻きに眺めている私にすら気さくに話しかけてくれる、とても優しい子だった。

 クラスメイトから塚元くんが美咲を好きだと聞いた時も、それはまぁそうだろうと納得したし、例えば私が男子生徒だったら、少なからず美咲のことを気にかけていただろうと思う。


「篠崎さん、お願いごと何にするの?」

 あの神社で願掛けをする直前、まるで大好きな親友にするかのように親し気に、美咲は私の肩をぽんぽんと叩いた。

「えっ、あの、なんか、成績の、こととか」

 胸の中に思い描いていた願い事とは裏腹に、私は無難な回答を口にする。そっかぁ、と疑いもしていない表情で美咲が笑い、それから、私はね、と口を開いた。

「私はね、隼人はやとが私のものになりますように、ってお願いする」

 隼人は塚元くんの下の名前で、それを易々と口に出せる美咲が心の底から羨ましかった。私は美咲のようになりたくて、なれないことも分かっていて。塚元くんを奪えるとも思えなくて、それでも美咲が欲しがるものを欲しくなって。羨ましくて、まぶしくて、つぎはぎの感情のまま、それで私も願った。


「塚元くんが私のものになりますように」

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