まわる
商店街の福引でクッションを貰った。
四等の景品で、大きなガラガラを回して黄色い玉が転がり出ると、係の人が高らかにベルを鳴らして大きな声をあげた。
「おめでとうございまぁす! 四等っ、あちらのコーナーからお好きなものをおひとつお持ちくださぁい!」
やけに早い歳末の福引だと思ったら、お花屋のお姉さんが言うには「ブラックフライデー」なのだそうで、世の中の流れに抗わない姿勢がこの商店街を活性化させているのらしい。
四等の景品のコーナーは洋品店のワゴンセールみたいな有様だった。コーヒーカップとソーサー、テーブルクロス、ビニール袋に入ったニットやブラウス、カフェカーテンの布だけ、豪奢なバスタオル。
妙にレトロなラインナップに少しワクワクしてしまって、親指と人差し指であれこれと摘みあげながらワゴンの中を覗き込んだ。
そこで貰ってきたふかふかしたビロードのクッションは、思った通り、塚元くんを乗せて置くのにちょうど良かった。中央が窪んでいるから妙に座りが良いのだ。
「ピッタリだね」
「なんか……これって、水晶玉とか木魚とか、乗せるやつじゃねぇ?」
言われてみれば、四隅にフリンジも付いている。やっぱり面白くなってしまって、フリンジを掴んでダイニングテーブルの周囲をくるくると歩いた。クッションが回り、塚元くんが回る。
「おい、やめろって」
「なんかこれ、フォークダンスを思い出さない?」
「全然違うだろ。やめろって。なぁ、おい」
困惑する塚元くんは何だか可愛いし、この状況はとても可笑しい。私はオクラホマミキサーを口ずさみながら、満足するまでテーブルの周りを歩き続けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます