食事
玄関先に段ボールが置いてある。実家から届いたもので、中にはカレーのルーとか蜜柑の缶詰とか、じゃがいもや玉ねぎやカボチャなんかが入っている。あとスペースが余ったのか特売のティッシュペーパーのソフトケース。
そのティッシュペーパーのソフトケースを重ねてタオルを敷いた台的なものの上に塚元くんは居る。鎮座している。何しろ生首だ、安定感をなくしたら転げ落ちる。それはさすがに可哀想。
「食事ってできるのかな?」
「さぁ、わかんねぇけど腹へった感じはある」
「腹、ねぇ」
首を傾げつつ、冷蔵庫から取り出したプリンのフィルムを剥がしてひと匙掬う。それを塚元くんの口の前に持っていくと、塚元くんがぱかりと口を開いた。そこへスプーンを差し込む。
「普通に旨い」
「……なるほど」
こくりと嚥下した気配のあと少し観察してみるけれど、特に変化はない。例えば下から出てくるとか、意表を突いて目とか鼻から出ちゃうとか、そういうのもなさそう。
「食べられそうだね」
「食える!」
かくして私は塚元くんに「はい、あーん」をやらかす事になる訳だけど、そこに甘い空気とかはない。子供の頃、飼っていたセキセイインコの雛に細長いスプーンでご飯をあげた時の記憶なんかをぼんやりと思い出しながら、「はい、あーん」とするだけだ。
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