生首と過ごす十一月のお話

野村絽麻子

むかしばなし

 確かに言った。言いました。最強のご利益があるとされる某有名神社で、願い事を。


「塚元くんが私のものになりますように!」

 願いは叶った訳ですが、こんな中途半端ってあります? って話で。

「なぁ、おれ腹へってきたんだけど」

 神様、冗談キツいです。これは確かに私の憧れの塚元くんではありますが、あのお願いをした私は制服に身を包んだ修学旅行の学生で、それから年月を経た現在の私はとうのたった社会人うん年目のくたびれた女で、そこへを放り込みますか神様。

「篠崎って料理上手かったじゃん? 調理実習の時さぁ、野菜とか切る手付きがプロだったよなぁ」

 生首状態の塚元くんはテーブルの上で懐かしそうに目を細める。何だろう、この状況。生首に昔話されるとか、謎すぎる。

 でもなんだか、そんなこと言われると私までお腹が空いてきたような気がするから不思議だ。冷蔵庫に何があったか、何が作れるか、考えながらスーツの上着を椅子の背にかけた。

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