生と死と 第一部 第三章

『世界がひもでみえること』や『ひもをとおして未来がみえること』なんかを隠蔽したうえでっつうはんぶんじよくれいの母親のこうによってあいあいたる『みどり幼稚園』に入園したおれさまだが博覧強記のばあちゃんがじゆつてきそくいんしたようにてんしんらんまんなる幼稚園生活は破綻しちまったんだ。

 もうまいだったおれさまはとくあいをそそいでくれた母親のせいちゆうも無視していくばくなる『能力』を濫用しちまった。

 を生じている家庭の子供に「おまえのおとうさんとおかあさんははなればなれになるからとめとくといいよ」といったものの実際にかれの両親は離婚したり疾風迅雷の長距離トラックの運転手を父親とする子供に「おまえのおとうさんはな。あした交通事故で死んじまうよ。あしたはいっしょにうちにいたほうがいいよ」なんていったものの現実にかれの父親は交通事故でへいしたりというように『未来がみえる』能力をうんじようさせちまったのさ。

 わかのおれさまとしてはおれさまの『能力』でひとりでもおおくのほうばいを秋霜烈日の悲劇からきゆうじゆつしたかったわけなんだがへんぽんとしてようなる不吉なことばかりげんするっちゅうこっておれさまはやがだんらんほうばいたちからひんせきされていった。

 『みどり幼稚園』年長組にでもなりゃあかんどくとなっちまっていつもしゆんぷうたいとうたる教室の片隅で白濁したカーテンにくるまっているかふうこうめいなる庭園でえいしようぜんとしてお砂場あそびでもしているかするしかなかったんだぜこの野郎。

 ようにして独立のおれさまは陰陰滅滅たるおもいでの『みどり幼稚園』を卒園してごうしやなる自宅から徒歩三十分の新町小学校に入学したんだがとくあいをそそぐべき母親が医師としてかんじありよしたことをらんしようとして不彀本ぽこぺんのおれさまの性格はますますあんたんとしてきやがったんだ。

 一番の問題はくだんの最愛の父親を交通事故で喪失した男児だった。

 かれは『おれのおとうさんが死んだのはあいつのせいだ』なんておれさまを逆恨みしやがってそうこうたる新町小学校中の生徒に『あいつは人間の死に方をげんしてそのとおりにするやつなんだ』なんてきよくてんせきたるおれさまをざんぼうしやがったんだ。

 あいあいたる幼稚園時代からばくぎやく友なんてひとりもいやしなかったおれさまはかくりようたる小学校に入学してみてもせいかくなるほうばいのひとりもできないどころかいんこうせつが生徒たちをふうしたために愈いよいよけしたる子供社会から排斥されるようになっちまった。

 百折とうのおれさまはかんどくながらも一所懸命にきよくべんしててんしんらんまんなる子供らしい子供にならんとしたが霊肉ともに疲弊しちまってばたんきゅーしそうになっちまったんだ。

 問題はもうまいなる六年生に勃発しちまってくだんの父親を喪失した少年が『別々の中学校にいくから最後におめえをなぐらせろ』なんつっておれさまにけんをふっかけてきやがったんでおれさまは陳謝してやった。

「おれは未来がみえるけれどどうしても『みえた未来』はかえられないんだ」なんてさ。

 こくそくたるおれさまのざんざんも無視してかれがおれさまをちようちやくせんとするからかれの一挙手一投足までそくしていたおれさまはてんのように鉄拳を回避して無意味なけんしゆうえんさせんとした。

 かれはあくまでもおれさまをぼこぼこにせんとしたんだがおれさまが超人的なる能力でようげきせんとするもんだからやがおうようたる担任の教諭が到着してもんちやくはおしまいになったんだ。

 えんえん長蛇たる小学校生活でもいつだんらんのようなほうばいもできなかったおれさまは豪邸たる自宅から徒歩三分の北中学校に進学してすくなくともくだんのけん相手のかれけつべつしただけでもあんしていた。

 さんらんたる中学校生活がらんしようをむかえても陰陰滅滅たる雰囲気のおれさまはひとりもほうばいはできなかったし問題はさらに悪化しちまった。

 はんぶんじよくれいの中学進学に西中学校に進学したあいまいとした記憶しかない男子生徒から「大事な用事がある」ってんで某日逢魔時にかくやくたる落日に抱擁された新町小学校の校庭にきようどうされた。

 おれさまをぎようぼうしていたのはくだんのけん相手のかれだったのさ。

 かれわいざつなる西中学校でわかのボス的地位をさんだつしたらしく数人の筋骨隆隆の生徒をそうしておれさまにろうぜきせんとしやがった。

 『未来』がみえていたおれさまは愈いよいよ『本気』にならずにはいられねえで百戦錬磨の不良どもをめつたらにぶちのめしてやった。

 数人の不良どもがさんそうしておれさまの百骸九竅を羽交い締めにせんとするはずだからおれさまは刹那にそんきよして眼前の相手のあしもとわしづかみにしてやった。

 いんの状態で体勢をくずした相手の両脚をかかえたままおれさまはへんぽんかいてんしてほかの不良どもをなぎはらってやった。

 最後にはふりまわした相手をほうてきしてくだんのボス役のけん相手に激突させてやった。

 まんしんそうの仲間の下敷きになってそうそうろうろうてきちよくしたボス役のけん相手はそれでもおれさまをちようちやくせんとばくしんしてきたがしやはんの事態を通報されたらしいけいおやけんようそく阻止してきてひきわけとなる。

 不良少年のらくいんてんこくされて両学校側からひんしゆくされたおれさまはろうかいなる本学校側からばあちゃん同伴でしようへいされてそうの担任にちようちやくされんとしたんだ。

 おれさまのばあちゃんが「この子はわくるねえがあよ。これがこの子らの運命にちがいねえ」といってしてくれた。

 おれさまは認識した。


 ばあちゃんだけはおれさまを愛していると。

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