第102話 「あんたは、知っているんだろう?」②
芙美子の名前が出てきたのは、何も近藤のルートからだけではない。俺と近藤の共通の知人としてだ。
だから、俺が知らないはずはない。古田は前回会った時にそう言っていたのだ。
それを隠した俺がいけなかった。何かあると思われて当然だ。
古田は、更に市村芙美子について調べ出したというわけだ。
「中谷さん、どうして、そんな権幕顔なのですか?」
古田は俺の顔を見ながら言った。
心を落ちかせようにも動いてしまう。芙美子が生きているのなら、行方を知りたい。今はそれだけだ。この男なら知っているはずだ。
俺は、
「彼女に会いたいんだ。いろいろと訊きたいことがある」と半分本当で残り半分は嘘のように言った。
古田は「まあ、いいでしょう。そんな返事でも」とにやりと笑った。
「彼女がどこにいるか知っているのか?」
古田は難しい顔をして、「そこまでは知りません。以前に、学生時代の彼女のことを色んな人に聞きましたが、現在、どうしているかまでは・・」と答えた。
それは古田の調査外のことなのか?
「あんたなら、調べることができるんだろう?」
古田は更に眉間に皺を寄せて「できないこともないですが・・」と俺の次の言葉を引き出すように言った。
報酬か。
「いいだろう。市村芙美子のいる場所が分かれば、連絡をくれ、金なら出す」
すると、古田は、
「学生時代に住んでいた場所なら既に掴んでいたのですが、現在となると」と、俺の顔色を伺いながら、
「いいでしょう。すぐに調べることにします」と嬉しそうに言った。
古田はそういう人種なのだろう。金をもらえるとあらば、犯罪でもない限り動く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます