第74話 嘘③

 身動きの取れない高坂百合子は、喘ぎながら、俺と裕美に向かって、

「裕美っ、あんたが悪いのよっ!」と罵り始めた。

 裕美が? 一体どうして・・

 裕美は「なんのこと?」と訊ねた。

「マサキくんが、裕美のことを好きだって言うから・・」

 悔しそうに高坂百合子は言った。

「マサキくんが、私のことを?」

 裕美には何のことか分からないようだ。

 二人の会話を聞いていると、それは、高坂百合子の激しい嫉妬だったようだ。

しかも、いわれのない一方的な恨みだ。


 高坂百合子が慕う同じクラスの男子が、裕美に片思いをしているらしい。

 それがイジメのスタートとなった。

 原因を知ってしまうと、なんだ、と思うが、一度、火がついたイジメは留まることを知らなかった。

 彼女は、自分の手足となっている配下のような少女たち、つまり、ショッピングモールの三人の少女たちをけしかけていた。それはネットの世界にも及んでいたと推測される。

 そうでないと、書き込みの少女たちを全員知っていたということの説明がつかない。

 高坂百合子は、クラスの裏側で暗躍している子だったのだ。


「全部、あんたのせいよっ!」高坂百合子の醜い声が公園に響き渡った。

 さっきまでの美少女はどこへ行った? 

「私の方が、裕美より絶対に可愛いのに・・なのに、なのに、マサキくんは・・」

 高坂百合子は続けて、「マサキくんは私のことを見ずに、裕美のことばっかり」と言って。「私は悪くない。私は悪くないわ」とうわ言のように繰り返した。

 よほど裕美に対する恨み辛みが溜まっていたのか、話している間は、恐怖と熱さを忘れているようだった。

 だが、すぐに「あついいいっ、誰か助けてっ!」と再び叫びだした。

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