第62話 サイト②

「ミナコ、いつもライター持ってたもんね」

「えっ、それ関係ないでしょ」

「だからさ、私が言いたいのは・・ミナコ、きっと罰が当たったんだよ。ミナコって、前にライターで裕美の腕にライターを近づけてたことがあったじゃん」

「あった、あった。その罰かあ。ミナコ、何回か、そんなことをしてたもんね」

「バチだ、バチだ・・」

「でもさ、ミナコに大怪我を負わせたのは、レナなんでしょ。ミナコの親が、レナの親に抗議しに行ったって聞いたわよ」

「でも、レナの親もそれどころじゃないでしょ。娘の指が、全部ビラビラになったんじゃあね」

「ビラビラ、ビラビラ」

「指が、全部溶けたっていう噂だよ」

 あの後、こんなことになっていたのか・・当然、裕美もこれを読んでいるんだろうな。

 そう思いつつ読み進めた。


「そういやさ、レナって、この書き込みに、ヒロミに接着材を使って悪戯する、って言っていたよね」

「そうだったね。けど、それが何?」

「レナの指・・接着剤だらけで、それに引火したらしいよ」

「接着剤って、引火するもんなの? 発熱は聞いたことがあるけど」

「そんなの知んないわよ」

「指からいつまでも接着剤が取れなくて、指がドロドロらしいよ」

「ドロドロ・・」

 これを書き込んでいる連中は、少女たちの容態より、その症状に関心があるようだ。


「ナツミも重傷らしいよ」

「ナツミが重症?」

「彼女、ちょっと太ってたからね」

「私もダイエット中!」

「それ、ここでの話と関係なくない?」

「聞いた話では、ナツミの体を貫通したハサミが、カチャカチャと開閉を繰り返していたらしいよ」

「そのハサミって、もう何かの生き物じゃん」

「ハサミが、カチャカチャ・・チョキチョキ」

「ハサミっていえばさ、ナツミ、ヒロミの髪を後ろから、バッサバッサと切ったことがあったわよね」

「あったあった。でも、あれ、ちょっとやりすぎじゃない? ヒロミ、泣いてたじゃん」


「バッサバッサする人には、ブスッと刺して、後は、チョキチョキ」

「誰、あんた?・・さっきから」

 少女たちの中に、変な人間が混ざっているようだ。


「黒川先生も大変みたいよ。保護者連中にぼろんちょんにされているみたいだしさ。あとで中谷さんの家に確認する、とか言っていたよ。先生は、何の関係もないのにね」

「ぼろんちょん」

「ヒロミが、そのショッピングモールにいたんだもんね。先生もぶつける矛先がないから大変だあ~」

「でもさあ、他の子が言っていたんだけど、黒川先生、イジメを見ても見ぬ振りをしていたらしいわよ」

「ミナコのお母さん、市の議員さんだもんね。話を進めるのが難しい、って聞くよ」

「誰かが、イジメのことを先生に言っても相手をしてくれなかったって」

「見て見ぬ振りも同罪」


 話が裕美のことに戻ってきた。だが書き込みがおかしい。

「ヒロミの近くにおっさんがいたって聞いたけど、親父かな?」

「あれ? ヒロミに父親って、いたっけ?」

「エンコーじゃない?」

「へえっ、ヒロミ、けっこうやるじゃん」

「ヒロミ、可愛いもんね」

「可愛いけど、みんなに馴染まないから、ミナコらに嫌われるようになったんじゃないの?」

「そんな理由で?」

「そんなものだよ」

「そんなもの?」

「ミナコらも、馬鹿だね」

「なんで馬鹿なの?」

「だってさあ・・」

「だって、何なの?」

「ヒロミに何かするから・・」

「何かするから?」

「みんな、同じ罪だ」


 その文章の後、書き込みが連続して入ってきた。

「あれ・・何か変な声が聞こえる・・」

「私も変! 耳の奥がつーんとしてきた。絶対おかしい!」

「ツーン、ツーン」

「私、喉の奥がイガイガしてきた。風邪かな?」

「イガイガ・・イガイガ」

「あれれ、喉の奥に何か詰まっている感じ」

「詰まっている・・息が苦しい」

「あれ、私も・・お母さんに言わないと、ちょっとこれ、変」

「お母さん、お母さん、お母さん・・」


 なんだ、この変な書き込みは?

 時計を見た。現時刻だ。

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