第61話 サイト①
◆サイト
その夜、書斎でノートパソコンを開いた。
裕美のメモの通り打ち込むと、目的のサイトが開いた。いわゆる学校の裏サイトみたいだ。これまで見たことがない、というか関心の無かったサイトだ。裕美が書いたコード番号がないと開かないようになっている。
さっそくコードを入力すると、更に奥の部屋に進んだ。
黒いページ色に怪しげな文字が連なっている。
それにしても、年少の子らが書いた文章は普段見慣れない文章のせいか、抵抗がある。文章に遠慮がないというか、黒川先生が言っていたように残酷な感じも受ける。
そして、肝心の裕美に関すること・・膨大な書き込みの中で、裕美に関することを探すのは困難なことだ。
と思ったが、そうでもない。検索のコーナーである程度の絞り込みができるようになっている。
まず試しに一か月分遡って見てみることにした。
想像していた通り、イジメ関連が多い。そんな憂き目に遭っているのは、裕美だけではないようだ。他にも数名いる。
名前もそれなりに分かる。「ヒロミ」「H・N」と言うのがおそらくそうなのだろう。
裕美に対して、誰が何をしたとか、何を言ったとか、あたかも自分がやったことを第三者がやったことにしているのが明らかに分かる。
加えて、予告のようなことも書いてある。
教科書を破く、体操着を隠す、背中にスプレーで字を書く等々、何年も前からある定番のようなイジメ方法から、看過できないようなことも書いている。
階段から突き落とす、とか、髪に火を点ける、は見過ごせない。
あの火傷のことも書かれていた。
当然日付が、あの事件より前のものだが、「おしおき」だとか、「自ら、火傷を負った」と書かれている。
先生が言うように、自分たちを正当化しようとしている感も否めない。
そんな中、「ヒロミに何かしたら許さない」という同じ内容の書き込みが数件あった。
そういう場違いなコメントがあれば、他の誰かが攻撃してくると思われたが、そんな言葉は見受けられなかった。おそらく相手をしていないのだろう。
ひょっとしたら、この人物が、裕美の友達なのか、と思った。
これらを読んでいて分からないのは、イジメの理由だ。なぜ裕美がこのような理不尽な目に遭うのか全く分からない。
更にページを繰っていくと、先日の日曜日のショッピングモールの事件の後日に辿り着いた。
これらの書き込みは現在進行形のようだ。書き込みの時刻が今日の夕刻だ。そして、現時刻まで続いている。
「ヒロミに、関わったら、やばいらしいよ」
「やばい?」
「ミナコも、ナツミもレナも結構ヒロミにひどいことをしていたからね」
「ひどいこと?」
「三人とも、入院してるんだよね。重症らしいよ」
「ミナコは、顔が凄いことになってるんだって」
「顔がすごいこと?」
「そうそう、顔が横にスパッと切れているんだって、もう修復不可能なんじゃない?」
「スパッと?」
「その上、火傷がひどいんだって」
「顔の表面が、ジュクジュクらしいよ」
「ジュクジュク・・」
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