第111話「変形する怪物」
『AAAAAAAAAAAAAAAAAAA!』
アインスが――オーキドマンティスゴレイムが大地からストーンゴレイムを作りだし、盾とする。
配下をタンクにしながら両腕の鎌を変形させ、弓へと変える。
無数の矢を放つ。
「せいやああああああああああああああああああ!」
ヴェーセルが拳を振るう。
ゴレイムを粉砕しながら一歩ずつ距離を詰める。
しかして、その足が止まる。
「む」
いつの間に設置していたのか。
トラばさみががっちりとヴェーセルを捕えていた。
『Form change』
ヴェーセルもまた装甲を切り替え、伸縮自在の鞭を伸ばして攻撃する。
ゴレイムは両手の刃を以て、鞭の先端を弾き飛ばそうとして、そうしきれずにダメージを受ける。
どちらもが相手に手傷を負わせつつ、それでも決定打には至らない。
「どうやら、アインスの能力は変形で間違いないようですわね」
光線を放つ鴉ゴレイムや、かつて鉱山都市で戦った爆破能力を持つゴレイムなど、ロックゴレイムは各々が強力な固有能力を使ってくる。
アインスがオルクハイドとして戦っていた時に、様々な武装を展開して戦っていた。
しかし、あれはむしろゴレイムとしての能力をシードマスクから供給されるエネルギーを以て行使していたというのが正確なところだろう。
元々オルクハイドはプロトタイプの仮面騎兵であり、持久戦特化かつ特殊能力を持たない存在だった。
しかしながら、ゴレイムである彼女がエネルギーだけをもらい受けることで持久戦ぐらいしか使い道のなかったエネルギーをさまざまな武装として使えるようになったというわけだ。
それを証拠に、イクシードスキルを使ってくる気配がない。
ゴレイムとしての精神が主導権を握った結果、シードマスクのエネルギーを運用できなくなっているのだろう。
閑話休題。
彼女の能力は、果たして強力と言えるのだろうか。
答えは。
「本当に、厄介ですわね……」
かつて他のゴレイムと戦った経験が、教えてくれる。
目の前のオーキドマンティスゴレイムもまた、他のロックゴレイムとそん色ない怪物である、と。
例えば遠距離から一方的に攻撃できる弓矢。
例えばこちらの装甲を貫通できるドリル。
例えば相手を拘束するトラばさみ。
それらをすべて、要所要所で使ってくる。
加えて、ストーンゴレイムを生み出し物量でも攻めてくる。
はっきりいって、心情を抜きにしてもこれをヴェーセル一人で倒せるとは思えなかった。
まして、むこうは一方的に無尽蔵に土からエネルギーを酢って回復するのだから。
「それでも、勝ち筋がないとは言いませんわ」
アインスを殺すのは難しい。
ましてや、この後控えているガンドックはロックゴレイムとの戦いを想定すればなおさらだ。
それでもまだ望みはある。
相手はいまだにイクシードスキルを使ってくる気配がない。
複数回放てる彼女が温存する意味はないから、単純に
イクシードスキルでアインスを戦闘不能まで追い込み、ジニーと合流して彼女の魔法で拘束。
そこからルーナたち四人でロックゴレイムを見つけ出し、ガンドックにロックゴレイムをぶつける。
ガンドックは、傍から見れば滑稽なほどに英雄というものにこだわっている。
ゴレイムとの戦闘を、他に戦えるような人材がいない状況で避けるとは到底思えない。
「やるしか、ありませんのね」
ヴェーセルが『仮面』に手をかけたちょうどその時。
「ヴェーセルさん?」
声がした。
オーキドマンティスゴレイムをはさむような位置から。
「どうして?」
隠れるように言っていたはずだった。
場合によっては避難するべきだとも思っていた。
なのにどうしてここにいる?
「シャーレ……」
いつの間に出てきたのか。
そもそも、彼女は本当にシャーレなのか。
「A?」
「ひっ」
アインスが、彼女に向き直る。
オーキドマンティスゴレイムとしても、ヴェーセルは決して楽な相手ではない。
そもそも、数分やり合って未だ殺せていない異時点でゴレイムにとってはイレギュラーである。
であれば、それは無理のない話だった。
「や、やめ――」
アインスは、オーキドマンティスゴレイムは。
シャーレの方を向き。
「え?」
一瞬で距離を詰めて。
大鎌を振り上げた。
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