第92話「心と宝玉」
『Exseed charge』
刹那、ゴレイムが頭から両断される。
「Va、バギー」
ボロボロと崩れるゴレイムと。
「先日はどうも、オリバロッソ」
大鎌を手にした胡蝶蘭の戦士――仮面騎兵オルクハイドがそこにいた。
「グ……」
ガンドックは何も言えなかった。
そもそも、彼女が先ほどのように大鎌を一振りすれば仮面を砕かれたガンドックは死ぬ。
変身を解かれ、かなり消耗した今の彼では耐えられない。
「ふっ」
大鎌を振り上げ、振るった。
ぼとり、と鞭が斬られて落ちる。
拘束の解けた彼が、ゆっくりと立ち上がる。
「な、何のつもりだ?」
「拘束を解いただけだ。このまま放置していればゴレイムに食われて死ぬだけだからな」
「……それはそうだが」
殺せる。
ガンドックは冷静に判断していた。
ベルトを展開し、バックルに『仮面』をセットしたことでオリバランチャーも戻ってきた。
いつでも変身できるし、いつでも殺せる。
アインスは、間違いなく消耗している。
変身を即座に解除していることがその証明だ。
「では、我はもう行くぞ。貴様も貴様の仕事を果たせ」
「え?」
そんな彼女の言葉に、手を止めた。
「あのゴレイムは、我の配下ではない。この意味がわかるだろう?」
「オリバロッソ、我の背中を撃ちたければ好きにするがいい。それも、貴様の仕事だ」
「……っ!」
こちら側の殺意に気付かれていたことに、ガンドックは驚く。
そして気づいたうえで、背中を自分に向けていたことにも。
「では、また会おう」
そう言い残して、アインスは立ち去った。
あるいは、まだ殺せたかもしれない。
オリバロッソは遠距離戦特化の仮面騎兵であり、ドローンを飛ばすか第六形態を使えば追いついて
「くそがっ!」
ガンドックは、拳を岩に叩きつける。
戦闘能力で劣っていながら、奇襲で勝機をつかみ取ったヴェーセル。
戦う以前に、心の強さで負けていると感じさせてきたアインス。
いずれにも負けたという敗北感を拭い去ろうとするように、何度も拳を岩にたたきつける。
岩が砕け、彼の皮膚や筋肉もまた反動で裂けていく。
「クソが」
ゆっくりと再生していく手のひらを見ながら、ガンドックはそう毒づいた。
◇
「かなり、消耗したな」
体が重い。
イクシードスキルを三度も使えばそうなる。
持久力に秀でたオルクハイドであってもだ。
街の中を歩く。
四体のゴレイムを一気に作るのは、ロックゴレイムでもある彼女の経験からいっても不可能だ。
考えられる可能性は、予め作っておいたゴレイムを地下などに待機させておき、一斉に暴れさせたという可能性がある。
それだけの戦力を一か所に集めるというのは、リスクが大きい。
ここから考えられるのは一つ。
ロックゴレイムは、十中八九
誰かに擬態しているか、あるいは地下に潜伏しているのか。
いずれにしても、街と人の両方を探さなくてはならなない。
ガンドックと『軍隊蟻』が確認しているはずだが、結局は対ゴレイムより対人戦を重視しているような連中である。
チェック漏れがあったのだろうと、アインスは考えている。
「あ?」
ゴレイムと言えど、仮面騎兵であろうと、限界というものがある。
ましてや、彼女はシードマスクに寄生されたことによって、精神が人間にかなり近くなっている。
「あれ、あなた、もしかして」
体が地面に倒れこむ感触を感じながら、アインスは意識を手放した。
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