第90話「蛇とカメレオン」
ヴェーセルは、ジェットパックを吹かして、ガンドックに正面から突っ込んだ。
「浅い」
ガンドックはグレネードを発射して、カウンターとする。
耐久力にかける『鳥』では、直撃すればおそらく耐えられない。
直撃すれば。
「ふっ」
ヴェーセルは、翼剣を周囲に展開すると、足場にして垂直に駆け上がった。
「はっ」
その後、足場にしていた翼剣にグレネードが命中し爆発。
あらかじめ弾薬を生産し、発射するのがオリバロッソの能力。
確かに強力ではあるが、欠点もある。
弾切れだ。
弾は『仮面』から取り出し、装填する必要がある。
グレネードを先ほどの砲撃で使い切った。
ゆえに、あとは接近して叩くだけ。
「舐めるな!」
『Form Ⅲ――
ガンドックが『仮面』に触れると、形態が切り替わる。
一丁のランチャーが、無数のドローンへと変形する。
「こっちなら、弾切れは関係ない!」
「確かにこの数は厄介ですわね……」
形態によって弾丸が個別にカウントされているのか、あるいは弾切れでもドローンをぶつけることが出来るから問題ないという意味か。
時間稼ぎは、一瞬で十分だった。
『Exseed charge』
「なっ!」
ドローンを足止めにして、得られた一瞬を使いあらかじめ仕込んでいた『魔弾』を取り出す。
『魔弾』が、ドローンのうちの一つに吸い込まれる。
どくん、無機質なドローンが生命のように脈動し、ヴェーセルに向かって飛翔する。
ヴェーセルは、避けられないと判断して対応しようとするが、一瞬遅い。
魔弾ドローンは命中。
大爆発を引き起こした。
「あ、ぶなかった」
ヴェーセルの前には、砕け散った翼剣と。
「カメラ」
「やっぱり、わけわかりませんわね……」
割れて崩れていくゴレイムのコアだった。
再生力に秀でたゴレイムと、高い強度を誇る翼剣を間に挟んでどうにかしのいだ。
『Form shift――rapid rabbit』
『Form Ⅱ――
互いに武装を消耗したがゆえに、次の形態に切り替えて仕切り直す。
ヴェーセルは接近戦に持ち込むため速度特化の『兎』を。
ガンドックは、ヴェーセルの機動力を警戒し、広範囲を吹き飛ばせる形態を。
『Fire』
機関銃から無数の弾丸が放出される。
「第二形態は装弾数が多いのが強みの範囲攻撃特化形態だ。はっきり言えば勝負にすらならないぞ」
弾幕がヴェーセルを追いかけ、追いつく。
何十という弾丸がヴェーセルに命中した。
「ぐあっ」
衝撃に耐えられず、ヴェーセルは倒れ伏す。
「はあっはあっ」
「随分消耗しているな。ダメージが大きかったのか?あるいはそれ以外の要因があるのか?」
「…………」
高速高火力を両立し、現状最強の装甲である『鳥』だが、弱点がいくつかある。
一つ、操作が困難であること。
二つ、防御力を翼剣に依存しており、素の防御力は『鼠』と大差ないこと。
三つ、ジェットパック、翼剣といずれも利便性が高い代わりに燃費も悪く、持久戦には向かないということ。
これまでは『鳥』を使った時間が短かったから気にならなかったが、連戦に次ぐ連戦を繰り返した結果、二つ目、三つめの弱点が浮き彫りになってしまっている。
「結局、そもそもアンタじゃあ俺にはかなわねえのさ。実力に差がありすぎる」
「あ?」
ガンドックは、首をひねる。
確実に銃弾を浴びせて追い詰めたはずだ。
だというのに、なぜまだ折れていないのか。
「……蛇?」
いつの間にか、覆面の形が変わっている。
『Bind whip』
地中から、蔓が生えてくる。
それがガンドックを絡めとる。
「て、め」
腕ごと胴体を縛り、もう一本の蔓が銃器をつかみ取る。
攻撃手段はなくなり、動きも封じた。
あとは、仕留めるだけ。
『蛇』は、拘束と制圧に特化した形態。
能力は蔓の鞭の捜査と、もう一つ。
『Snake bite』
エネルギーの
蛇が獲物を丸呑みするように、体力を吸い取っていく。
ヴェーセルの傷がじわじわと治り、逆にガンドックの方がダメージを受ける。
持久戦になれば、『蛇』に勝つ術はない。
短期決戦に持ち込もうにも、そのための武器もない。
「あ、が」
やがて、ガンドックの変身が解けた。
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