第27話「深紅の衝撃」
「くえあ?」
「え?」
鴨ゴレイムの表面が爆発した。
ヴェーセルではない、彼女にその様な手段はない。
到着しており、避難誘導を始めた騎士団の誰かではない。
彼らの攻撃は、ダメージになりえない。
であれば、一人しかありえない。
「これは……」
「フッ、随分派手に暴れているようだね。よもや『Exseed charge』まで使っているだなんて」
よく知っている声だった。
爽やかで美しく、それでいて何かに吹っ切れたような声だった。
赤い薔薇の花弁を身にまとった、異形の戦士。
仮面騎兵ローゼイド、ローグ・ウッドペッカーが隣に居た。
すでに、仮面騎兵ローゼイドに変身しており、赤いバラを象った槍を所持している。
「ローグ、心の整理はつきまして?」
「フッ、いいや、まだだとも。だが、今やるべきことは心得ているつもりだよ」
「なるほどですわね、ならばよしと致しましょうか」
「散らばったゴレイムへの対処はお任せするよ」
「任されましたわ」
ヴェーセルは、分身全員がサンドゴレイムへの対処に向かい。
「さてと――掘るわよ」
『Exseed charge』
ローグは、ゴレイムを倒す覚悟で、人を殺す覚悟で仮面に触れた。
シードマスクからエネルギーが薔薇杖に充填され、杖が赤熱のオーラで包まれる。
「ずっと悩んでいた」
彼はあるいは、『彼女』は迷い、惑っていた。
自分がどうするべきか、どうあるべきか。
「人を殺し過ぎた。たくさん殺した。その罪は、絶対に消えない」
「くえええええええええええっ」
「けど、それでも私にも、曲げられないものがある」
ローグとして、キャラクターをロールプレイする中で、彼は多くの人と関わってきた。
『ドラゴンライド・アルブヘイム』において、ネームドのキャラクターはそう多くない。
たいていは、ゲーム上では顔すらも表示されていないモブである。
はじめは、模倣だった。
好きなキャラクターである、ローグ・ウッドペッカーであればこうするという解釈、あるいは予想から人とのかかわり方、あり方を作っていっただけ。
そして、いつしかロールプレイだけで説明できる関係性ではなくなった。
友人を得た。部下を得た。
元の世界とは違う方であれど、こちらの世界において父や母といった家族に出会えた。
仮面騎兵ローゼイドとして、守らなくてはいけない人を見つけた。
ローグ・ウッドペッカーというキャラクターのみではなく、彼女自身として、ここに立っている。
「だから、私も今いる命を守るために戦う。だって、私が迷っている間にも人が死んでしまうから」
杖から、炎弾を放出し、頭部を焼き続ける。
新たなサンドゴレイムは誕生しない。
もとより、叫び声によってサンドゴレイムを発生させているのであれば頭部を破壊しつづければその能力は使えないのが道理である。
同時に、【エレメンタル・サーチ】でコアの位置を探る。
どこに必殺の一撃を当てるべきか、知るために。
「戦うことが、殺すことが罪だというなら、私自身が背負うとしよう。私は、お前を倒す。人間として、ローグとして!」
ローグは、宣言すると同時に。
手に持った薔薇の杖が変形する。
薔薇の花弁が先端部分に生えた杖が紅い円錐形の穂先を持った、槍へと変わる。
その槍を、ローグは投擲した。
「グアッ」
熱された槍がコアのある腹部へと突き刺さる。
そして、ローグは膝を折り曲げ跳躍する。
その勢いのままに、跳び蹴りを見舞う。
飛び蹴りを、槍の石突に見舞って押し込む。
熱された槍を物理エネルギーによってカタパルトとする技。
これこそは。
『Crimson stinger』
「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
高熱と物理的な衝撃に耐えられず、ゴレイムのコアは砕けて。
「――さらばだ、その命、土に還りなさい」
鴨ゴレイムは、爆発四散した。
◇◇◇
ここまで読んでくださってありがとうございます。
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