第14話「友情」

「話を戻しましょう。ロックゴレイムを倒さなくては王都に永遠にゴレイムが現れ続ける事態になります。それを打開する方法はただ一つ。原因であるロックゴレイムを倒すこと」

「これまでもロックゴレイムを討伐してきたんですよね?その時はどうだったんですか?」

「今までのロックゴレイムはなんというか単純でね。人海戦術で割り出せたんだ」

「人に擬態しているなら、アリバイを徹底して調べればいずれわかることですものね」



 ゴレイムが現れた時にどこで何をしていたのか。貴族の権力を活用すればどうということはない。

 簡単に調べることができる。

 ゴレイムの被害を受けた人も除外できるから、おのずと犯人は絞られていくことだろう。



「ただ今回は相手が同じ貴族であるということもあって、難航している。なにしろ、向こうもロックゴレイムのことを知らないからね。知っているのは仮面騎兵の資格者と王族だけだよ」

「その方がいいかもしれませんわね。下手に知られてしまうと魔女裁判になりかねませんもの」



 人に擬態している怪物の存在は、世に漏れ出てしまえば社会的混乱を招く。

 場合によっては、文明崩壊すら引き起こしかねない。

 だから一部のものしか知ることができないように、情報統制するというのは正しい判断だと言える。



「ああ、そうなんだ」

「それで、まさか迷宮入りにするつもりではないでしょう?何か考えはないの?」



 ヴェーセルは、ロックゴレイムを発見し、討伐するためのアイデアはないのかと問うたが。



「ひとまず人海戦術でアリバイを洗うしかないかな。出来る範囲で、出来ることをやるしかない」

「……まあそうなりますわよね」



 何かしら秘策があれば、もうすでに打っているはず。

 それがないから、こうしてわざわざお茶会をしているのだろう。



「まず、王城に出た時点で貴族やその関係者に成り代わっていることは明白だ」

「確かに」



 王城に入れるものは限られている。王都の人口はおよそ百万人だが、その中で千人を切っているはずだ。



「ヴェーセルには、王城の傍にある、王立学園に通う者たちのアリバイを探って欲しい」

「なるほど、わかりましたわ」



 王族と貴族が通う王立学園には、学生ではないローグが入ると不自然ではある。ヴェーセルが調べるべきは学園内というのは理解できる。

 付け加えれば、王城にゴレイムが現れる前日、パーティに多くの学生が参加していたことも理由だろう。



「他については、アナタに任せてもよろしいの?もう少しワタクシも動いたほうが」

「私は王城で聞き込みを続けるつもりだ。君としては、あまり関わらない方がいいだろう」

「お心遣いは感謝しますわ」



 それから、色々と情報交換をしつつ、一時間ほど過ごした。



「今日は、ここでお開きにしましょうか」

「ああ、私もしばらく王都に滞在する予定だからね、王都の事件を解決するために、動くとするよ」

「ええ、お互いに頑張りましょう」



 別れ際、二人は立ち上がって握手した。

 ヴェーセルにとっては、唯一前世について話せる相手であり、友人と言える間柄でもある。

 付き合いも長く、親友と言っても差し支えない相手だった。

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