第31話 最期 ※ギオマスラヴ王子視点
牢屋に放り込まれて、しばらくの時間が過ぎた。ここに父上を呼んでくれと何度も頼んでいるのに、誰も何も聞いてくれない。俺の要望は、全て無視され続けた。
話せば、わかってくれるはず。全部、誤解なんだ。間違っているだけ。
出されるのは、家畜が食べるような必要最低限の食事。空腹で、それを食べるしか生き残る方法はない。味気ない食事が続いて、苦痛で仕方がない。こんな所では夜も眠れない。不安が押し寄せてきて、心が落ち着かない。だけど、どうしてこうなっているのかもよくわからないまま、時だけが過ぎていく。
早くここから出してほしい。このままでは死んでしまう。ずっと体調も悪い。頭がどうにかなりそうだ。信じられない、底辺の生活。
こんな仕打ちを受けるなんて、酷すぎる。王子である俺が、こんな扱いを受けていいはずがない。罪もないのに、十分に反省もした。もう、いいじゃないか。
父上は、本気で俺を処刑するつもりなのか。これは、なにかの間違いじゃないか。今すぐに牢屋の扉が開いて、父上が頭を下げて謝ってくれるはず。間違いだったと。
もしくは、手紙を受け取ったエルミリアが事情を知って駆けつけてくれるはずだ。俺の置かれた状況を知れば、助けてくれるはず。だって彼女は、俺の婚約相手だったから。一度は途切れても、きっとまた元通りになるから。
そんな未来を想像した。もうすぐ、そうなるはず。俺は、助かるべきなんだ。
しかし、その日がやって来てしまった。
「ほら、立て」
「ま、まってくれ……。俺は、違うんだぁ……」
看守が鍵を開けて、俺は牢屋から引っ張り出される。抵抗する力は残っていない。しかし、逃げないと。この先に待っているのは、間違いなく処刑台だ。
嫌だ。嫌だ。嫌だ。死にたくない!
「おいっ!」
「いやだぁあああ!」
振り絞って出した力で暴れて、床にしがみついた。みっともないなんて考えずに、とにかく生きるためにも必死。だけど看守に引きずられて、無理やり立たされる。
「うるさい」
「うぐっ!?」
布を口に押し込まれて、声が出さなくなる。同時に手首も縛られて、そのまま俺は引っ張られる。逃げ出すことは出来ない。
「連れてまいりました」
「ご苦労」
「うぐぐぐっ!」
民衆が集まる広場に、俺は連れてこられた。平民たちが騒いでいる。俺を指差し、怒り狂っている。やめろ。俺は王子だ。この国を継ぐべき、高貴な人間なんだ。
「これより、罪人の処刑を執り行う」
広場の中央には断頭台があった。あそこに立たされるのか? そんな馬鹿なことが起こるはずがない。俺を殺すなんて、絶対に許されない。そんなことになれば、王国の未来が。
「あぐぐっ!?」
縄で無理矢理引っ張られて、断頭台に立たされる。
民衆たちは大盛り上がり。もう、わけがわからない。処刑されるのか? 俺が? なんで? こんなのは絶対におかしい!
こうなったのも全て、あの女たちが悪い。
俺のことを騙して、浮気までしていたリザベット!
こんな窮地なのに、俺を助けてくれないエルミリア!
2人の女を恨みながら、俺は必死に頭を横に振る。死にたくない。死にたくない!
「やれ」
断頭台の刃が落ちる。金属音と共に俺は死ぬんだと理解した。なんでだよ。意味がわからない。なんで、こんなことにならないといけないんだ? ふざけるなよクソ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます