第6話 今後の方針

 元婚約相手となった王太子が口に出した、あの乱暴で愚かしい言葉について。イステリッジ家を貶すような発言も。口に出すだけでも嫌だけど、正確に伝えておいた。


「――ということです」


 全てを話し終えるのに、かなり精神力を消耗してしまった。それでもなんとか最後まで耐え切って、話し終えた私は深く息を吐きだす。


「……成る程。それはまた、随分と大胆な事をしてくれたものだ」

「えぇ。まさか、あれほど愚かだとは思いませんでした」


 私が呆れたようにため息をつくと、お父様は苦笑いを浮かべていた。そんな表情の奥に隠されている怒りが、垣間見える。お父様も怒っているのね。当然か。


「今までと同じように、イステリッジ家は王家に対して忠誠を誓うべきだと思うかい?」

「いいえ。今後、王家に従う必要などありません」


 私は首を横に振って、強く否定する。従う必要は、絶対にない。


「イステリッジ公爵家は、王家に助けられた恩がある。それでも、君の意見は変わらないか?」

「もちろんです。王家に助けられたのは、何百年も昔の話です。もう既に、恩返しは十分に果たしているでしょう。むしろ今は、彼らが私達に恩返しをするべき。それなのに、このような仕打ちを受ける謂れはないと思います」


 私は、自分の意見をハッキリと伝えた。それを聞いて、お父様は頷く。


「そうだね。私も同じ意見だ。今回の件については、徹底的に抗議しようと思っている」

「賛成です」

「実は、もう既に動き始めているんだよ。これから新たな関係を築こうと考えている相手に、手紙を送っておいた」

「そうだったのですか」


 さっき書いていたものが、その手紙なのでしょうね。もう動き出しているなんて、相変わらず仕事の早いお父様だった。


 その後、もうしばらくお父様と婚約破棄の件について話し合った。どうやって婚約相手だった男に責任を取らせようか、意見を聞かれたので答える。


 彼は、真実の愛が存在しているとか言っていた。それなら私は――。

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