第7話 コチラ側の報告 ※ギオマスラヴ王子視点

 なぜ俺は怒られているのか。間違っているのは彼女の方なのに。理不尽だ。




 パーティーが終わった後、父上に呼び出された。母上も同席している。婚約破棄の件について聞きたいと、事情を説明させられた。


 現場に居たリザベットも、ここに連れてきたら良かったかも。彼女も、今回の件の関係者だし。


 そんな事を考えながら、何があったのか問われたので正直に答えた。ようやく婚約関係を終わらせることが出来て、スッキリしたこと。あの女の悪行について。とある男爵令嬢をイジメていたこと。イステリッジ家が王家に対して、反逆の意思があるかもしれないと感じていたこと。


 前から気になっていた、エルミリアの態度。疑惑は数多くある。一つ一つ話していたら、きりがない。


「……お前は」

「え?」


 俺の話を聞いていた父上が突然、怒りの形相で立ち上がる。急だったので、びっくりした。父上は、僕の顔を睨みつけてきた。


「自分が何をしでかしたのか、わかっているのか!?」

「ッ!?」


 怒鳴り声に驚いて、思わずのけぞる。父上は、何をそんなに怒っているのか? 理解不能だった。だけど、落ち着いて言い返す。


「お言葉ですが、父上! 私は、間違ったことはしておりません!」

「公の場で、エルミリア嬢の名誉を意図的に傷つけるように婚約破棄を告げて、しかも侮辱して! イステリッジ公爵家まで無礼に扱ったんだぞ!? それを間違っていないだと!?」


 それは、彼女が間違っていたから。リザベットをイジメるような女に対して、遠慮なんて必要ないはずだ。


「でもそれは、彼女が先にリザベットのことを――」

「言い訳など、聞きたくないっ!」

「……」


 父上が椅子を殴って激昂する。俺は思わず、言葉を飲み込んだ。そんなに怒ったら、何も言えないよ。黙って横で話を聞いていた母上が静かに泣き出した。なんで、泣くんだ。なんで、俺が責められるのか。


 すぐにここから立ち去りたいと思う、嫌な雰囲気。


「彼ら一家を敵に回したら、どうなると思っているのだ……」


 ポツリと、父親が小声で呟いた。なぜそんなに恐れる必要があるのか。俺たちは王族で、彼らは貴族じゃないか。


「イステリッジ公爵家など、王家の威光にひれ伏すだけの貴族でしょう? 恐れる必要などありません」


 そう言うと、父上の表情が凍りついた。しばらく沈黙した後、静かに口を開いた。


「……お前はいつから、こんなに話が通じなくなってしまったのだ」

「……」


 話が通じないのは父上の方だろう。しかし今は、大人しく黙っておく。ここで反論しても怒られるだけ。どんなに正しいことを言っても、父上は理解してくれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る