第13話 魔法士学校
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魔法士学校は、貴族学校ではない。王立ではあるが、魔法士を目指す、魔法の才がある人物なら誰でも、何歳でも入学できる。
ただ、教室の席には限りが有るので、ある程度の能力値や守護精霊の大きさなどの足切り審査はある。
魔法士になりたい!だけでは越えられない壁、魔法の才能や能力の高さが必要なのである。
その代わり、魔力さえ高ければ、商人や職人、農民の子でも入学出来るし、将来、宮廷や魔法省などの魔法に関する職に就ける。
貴族の跡取り以下の子女がみな、新しい家を興す訳ではなくその多くが平民に降るため、庶民の中にも魔力の高い者は少なからずいる。
ゆえに、学園内では、身分の貴賤は問われない。
上級生か下級生か、指導員か生徒か。さすがに共通の上下関係はあるので、自然、上級生で能力の高い者が敬われる。
エリオス殿下は、魔力が国内外でも最高クラスに高く、生徒代表委員の長で、最上級生で、下級生に指導にも当たる研究員でもある。加えて王家の第二王子。
誰よりも敬われる存在だった。
魔法士学校の正門横の、貴族や名士、大商人などの裕福な家庭の子女を送り迎えする馬車が出入りする門をくぐる。
アァルトネン公爵家の紋章がついてはいるものの、入学当初しか使われなかったために今まで見られない、登録・認知されていない馬車ゆえに、門番の内検があったものの、中に乗っているのが私だと判ると、すんなりと通される。
「お帰りは、何刻頃になりましょうか?」
馭者をしてくれていた公爵家の執事が訊ねてくる。
いつもなら──以前はクレディオスと予習復習をしてから夕刻に侯爵家の馬車で共に帰っていた。今は、妹エミリアと談話するために帰って行くクレディオスを避けて、下校時間ギリギリまで図書館に隠り、晩餐前に間に合うように、学生用乗合馬車で貴族屋敷街まで帰って来るのだけれど。
「暮れ六つの鐘の後、半刻ほどで学門が閉鎖されるので、その間に帰るつもりよ」
「かしこまりました。では、暮れ六つまでにお迎えに参ります」
「ありがとう」
「勿体ないお言葉。お嬢さまを送り迎えする役は、執事達の間で取り合いでございましたゆえ、誰にも譲りません。明日以降も、このヘンリッキにお申し付けくださいませ」
なんだろう、なんか張り切っているみたいなので、特に異議はないので頷いておく。
貴族達の馬車が多く出入りするので、ごった返す正門エントランスから、最上級生用の学舎に向けて歩き出す。
「エステル」
教官の研究棟の方から、エリオス殿下が近づいてくる。
「殿下。昨夜は誠にありがとうございました。おかげさまで、こうして学園に通えております」
「堅苦しいのはいいよ。君が元気なら良かった。
それよりも、考えてくれたかな」
考える。とは、殿下の研究を助ける助手になるというやつだろうか。
「わたくしには、身に余る光栄です。お役に立てるとは⋯⋯」
「やってみなきゃ判らないだろ? そもそも、魔力の親和性はあの時の魔力譲渡で立証されてるんだから、反作用や拒絶反応は起こらずに共鳴魔法は使えると思う。どうしても嫌だと言うのでなければ、ぜひ、試すだけでも頼むよ。
それと、精霊魔法は、アァルトネン家の者でなくば教えられないだろう?」
ああ、それもあったんだわ
確かに、精霊との契約は、アァルトネン血族の秘術でもある。
教えられるとしたら、私と分家の、大叔父侯爵、
それらの中でも、精霊の好む魔力や霊気を持たず、精霊達の守護契約を交わせず精霊術は守護精霊のみの者や、精霊術を使えない者もいる。
つまり、精霊との契約や精霊術を教えるのに確実なのは、私、大叔父、叔従父、叔従母ふたり、セオドア
分家を継がず、他家に嫁いだ女性達や魔法士や騎士になったり市井に降りた一族の人達は、精霊の守護は得られなかった人が多く、殿下に教えられるほどではない。
「⋯⋯考えてみますが、あまり期待しないでください」
精霊術はまず精霊との契約を結ばなくては話にならない。
契約の仕方は、本来はアァルトネン血族の秘術なので門外不出とも言えるけれど、殿下にはお教えしてもいいと思った。
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