<5>
<5>
屋上での決戦が決着へと迫る少し前のこと。同ビルの一階での戦いは終わりを告げていた。
「──ハァ、ハァ。面白えもんだな、魔法ってやつは」
「──フゥ。誰にもいうなよ? でないとお前をここで殺さなければいけなくなる」
「ハッ。俺はクスリを疑われんのはごめんだ」
沖田と江崎はその数、実に二十の兵隊を壊し尽くし、戦いを終えて共にしゃがみ込んでいた。
「さて、私は屋上へ向かうが、お前は?」
「これで貸し借りなしだって言っとけ。俺はもう帰る」
話しながら、沖田は江崎が腹部を手で押さえているのに気づく。
「……何発だ?」
「一発だ。別に初めてのことじゃねえ。前にヤー公と揉めて腹に食らったことがある」
「見せてみろ。私の魔法で治せる」
「せっかくチャラにしたばっかだってのに、また新しい貸しを作るわけねーだろ」
「そうか。……お前、長生きできそうにないな」
「知るか。俺はやりたいようにやるだけだ」
脂汗を額に浮かべながら、江崎は立ち上がってビルから出ようとする。
「おい。病院に行くなら──」
「心配すんな。知り合いにモグリのヤブ医者がいる。てめえらのことも話さねえよ。何度も言ってんだろ。俺はクスリが大っ嫌いなんだ」
そう言ってよろけながら江崎は去っていった。
「──さて、私も休んでるわけにはいかないな」
沖田は装備の確認をする。散弾銃は弾切れ、回転式小銃は残り六発。最後に使ったナイフに刃こぼれはない。
ただの荷物になる散弾銃は壁の隅に転がし、屋上へと足を向ける。
「──生きててくれよ。死んだやつまでは治せないからな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます