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「……チッ」

 散弾銃に弾を込めながら、沖田空人はここ数分で五度目の舌打ちをした。

 柱の影に隠れながら手慣れた動作で素早くリロードを終え、柱に身を隠したまま、フロアの様子を見渡す。

 沖田はここまで六体の兵隊を葬ってきた。相手の攻撃をかわしながら、散弾銃でそのカタチを崩し、核となる水晶玉を腰に携えた回転式小銃で打ち砕く。これを六度。だというのに、今のフロアには見える限りでも十体の兵隊がうろついている。

「……ふぅ」

 奴らに知性が無くて助かった。一斉にこちらに押しかけて来られたら成す術がない。奴らに与えられた命令は、目に見えた相手を攻撃する、そんなところだろう。いくら奴の城の中とはいえ、細かな指示までは与えられないはずだ。

「全く。奴らに目はあるのか?」

 沖田は一人苦笑する。

 先行させた二人に対して言ったように、この程度の修羅場は何度も潜り抜けてきている沖田だ。あんな兵隊どもに殺されるようなヘマはしない。だが、あまりにも時間がかかりすぎる。

 全部を相手にせずに自分も上階へ向かったらどうか、と考えるがすぐにそれは捨て去る。もし仮に追ってきたら? 屋上で本命と挟み撃ちにされる可能性がある愚策だ。

 沖田は冷静に、残弾を含めた自らの装備を改めて確認する。抱えている散弾銃の残弾は残り十発。腰に携えている回転式小銃の残弾にはまだ余裕がある。そして懐に忍ばせたナイフが一本。

 これ以上、敵の数が増えるようなら自傷覚悟での戦闘となる。沖田の医療魔法は自らにも使用できる。心のない兵隊相手に根比で負ける要素はなかった。

「──さて、と」

 柱の影から散弾銃を構え、相手を求めて彷徨い続ける兵隊の一つに照準を定める。そして引き金を引こうとした瞬間──


「おいおい、なんだこれは? 水の妖怪がダンスパーティか?」


 沖田は反射的に声のする入り口へと照準を変える。そこにはガラの悪い、ある意味この場所に一番似合いそうな男が立っていた。

「おい、あんた。俺は邪魔しにきたんじゃねえ。借りを早速返しにきただけだ。だから俺を狙うのをやめろ。落ち着かねえ」

 そう言って江崎は、濡れた髪をかきあげた。

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