第2話 奴隷狩りから美少女エルフを助けまして






 どうも、機嫌を損ねた女神のせいでスライムになってしまった元勇者の元魔王です。


 まずは草むらから様子を窺う。


 敵の戦力の把握は大事だ。


 幸い、スライムのぷるぷるスモールボディーは隠れるのに向いている。


 草むらからエルフの美少女を襲う男どもがどんな面か拝んでやろうじゃないか。



「おいおい、暴れんなって。オレたちゃお前らの里の場所が知りたいだけなんだからよ」


「誰があんたたちなんかに!! さっさと森から出て行って!!」


「そういうわけにゃいかねぇさ。こっちだって仕事なもんでね」


「何が仕事よ!! ただの奴隷狩りでしょ!!」


「人の役に立ってんだから仕事さ。おら、さっさと吐かねーと痛い目に遭うぞ」


「きゃっ!!」



 奴隷狩りのリーダーと思わしき男がエルフちゃんを突き飛ばす。


 おのれクソ男め、美少女を脅すとは。


 それにしてもあのエルフちゃん、めちゃくちゃかわいいな!!

 おっぱいがぺたんぬなのは少し悲しいが、それを差し引いても顔が良い。


 綺麗な金髪をツインテールにしてるところがポイント高いね。

 青色の瞳や吊り目なところも良い。


 いかにもツンデレって感じがして素晴らしい。


 何よりエルフちゃんの恰好が最高にエロスティックですな。

 エルフの民族衣装は露出度が極まってる上、下着だって付けないから色々と際どいのだ。


 こう言っちゃあ悪いが、野郎がエルフを襲いたくなる気持ちも分かる。



「痛っ、ちょっと、髪引っ張らないでよ!!」


「うるせーな。おい、てめぇら。こいつを甚振ってやれ」


「へへ、良いんですかい?」


「ああ。一人くらいつまみ食いしても依頼主は怒らねぇだろうさ」



 汚い男たちがエルフに群がった。



「いや!! やめてっ、誰か、助けて!!」


「誰も来ねーよ。しっかし、こりゃ上玉だあ。オレの息子も喜んでるぜ。……胸がねぇのか残念だが」


「あ、あるわよ!! す、少しなら!!」



 エルフの女の子が組み敷かれ、今にも襲われそうな寸前。


 奴隷狩り共の戦闘能力の解析が終わった。



「そこまでだ」


「あん? 誰だ? ……スライム? いや、んなわけねーか。スライムが喋るわけ――」


「俺だ。そのスライムだ」


「「「「「「「!?」」」」」」」



 奴隷狩りたちが目を剥いて驚く。


 まあ、スライムって普通は喋らないしな。そもそも口が無いし。


 ……あれ? 俺ってどうやって喋ってんだ?


 い、いや、考えるのは後にしよう。今はエルフちゃんを助けるのが最優先だ。


 俺はぷるぷるしながら前に出る。



「へ、へへ、喋るスライムか。ちと驚いたが、魔物商に売り捌いたら高値で売れるな!! おい、そいつは殺さずに捕まえろ!!」


「へ、へい!!」



 エルフちゃんを襲おうとしていた奴隷狩りたちが今度は俺に群がってくる。



「大人しくしてろよ」


「なーに、エルフの奴隷よりはマシな暮らしができるから安心しろ」


「暴れたら痛めつけるからな」



 こいつら、彼我の戦力差も分からんのか。多分、分からんのだろうな。


 たしかに今の俺はスライムだ。


 スライムのぷるぷるボディーを維持している核、魔石に剣が掠りでもしたら死ぬだろう。


 だが、忘れることなかれ。


 俺は勇者であり、魔王だった男。魔法の知識において右に出る者はいない。……多分!!



「インフェルノプリズン!!」


「「「は?」」」



 俺の生み出した灼熱の炎が奴隷狩りの三人を捕え、一瞬で灰と化した。


 エルフちゃんも残りの奴隷狩りたちも何が起こったのか理解できないようで、その場に突っ立ったまま呆然としている。


 まず最初に動き始めたのは、奴隷狩りたちのリーダーと思わしき男だった。



「こ、殺せッ!! そいつはヤバイ!!」



 リーダーの言葉だからか、奴隷狩りたちはフリーズするのをやめて一斉に俺に向かってきた。


 先程までのこちらを下に見た態度は無く、見事な連携を見せる。


 よく訓練しているな。


 しかし、所詮は有象無象である。

 弱者が数人群がった程度で俺を倒せると思ったのは大きな間違いだ。



「アイシクルバースト」


「「「ぎゃ――」」」



 リーダー以外の奴隷狩りを全員まとめて氷漬けにして砕く。



「……ば、馬鹿な……どうして、どうしてスライムがこんな威力の魔法を撃てるんだ!!」


「簡単さ。大気中の魔力を吸収してるんだよ」


「は? 大気中の、魔力?」



 これは魔王だった頃に発見したことだ。


 普通、魔法は使用者の体内にある魔力を消費することで発動する。


 魔力を魔法に変えて放った場合、その魔法は一定時間が経過することで消えてしまうわけだが……。


 ではここで問題。


 消滅した魔法に使われていた魔力はどこに行ってしまうのか。


 答えはそう難しくない。空気中を漂うのだ。


 その魔力を吸収して次の魔法を撃ち、その魔法が霧散して生じた大気中の魔力を吸収して再び魔法を撃つ。


 永久機関が完成しちまったなあ!!


 まあ、実際は少なからずロスがあるので完全な永久機関ではないが。


 この方法ならスライムのような弱っちい身体でも関係無く魔法をバカスカ撃てるようになるってわけ。



「く、くそっ!! オレはまだ死にたく――」


「はい、インフェルノプリズン」


「ぎゃあああああああああああああっ!!!!」



 野郎なら容赦なく焼くさ。


 美少女美女だったら見逃してやるところだが、汚いおっさんは許す理由が見当たらない。

 命乞いは美少女に生まれ変わってからにするんだったな。



「さて、大丈夫かい?」


「え、ええ。あなた、言葉を話せるのね」


「まあね。すごいでしょ」


「ええ、凄いわね。……その、助けてくれてありがとう。一応、お礼は言っといてあげる。べ、別に助けてなんて頼んでないけどね!!」



 いや、めっちゃ助け求めてたけどね。まあ、そんなことよりも。



「美少女エルフのツンデレいただきましたー!! ごちでーす!!」


「な、誰がツンデレよ!! って、こんなことしてる場合じゃなかった!! 姉様たちのところに行かなきゃ!!」


「うん? 他にも誰かいるのか?」


「ええ!! 姉と妹がいるの!! 奴隷狩りから逃げる途中で逸れちゃって、多分二人は一緒にいるはず。もしかしたら奴隷狩りに襲われてるかも……」



 エルフちゃんが不安そうに俯く。俺は即行で決断した。



「よし、俺も行こう!!」


「え? いいの?」


「もちろん!! 困ってる時はお互い様さ!!」



 こんな美少女エルフの姉と妹だ。さぞや美少女美女に違いない。


 でゅふっ、ニヤニヤが止まらんですな!!



「ありがとう!! あんた、良いスライムなのね!! 私はアレイナ!! よろしく!!」


「男には欠片も優しくしないがな!! スライムだ!! 名前は無いから好きに呼んでいいぞ!!」


「ええ、分かったわ!!」



 手短に挨拶を済ませ、俺はアレイナと共に逸れた彼女の姉妹を探す。


 と言っても、手当たり次第で探すにはこの森は広すぎる。


 なのでちょっとした裏技を使うことにした。


 大気中の魔力を吸収し、ゆっくりと薄く伸ばすように森全体へと行き渡らせる。


 これで全ての動植物の動きが分かるのだ。


 そして、感知した動植物の中でアレイナと似たエルフの反応を探せば……。



「見つけた!! こっちだ!!」


「え!? 本当なの!?」


「おう!! 付いてきてくれ!!」


「え、ええ!!」



 俺はアレイナと共に森を駆け抜け、彼女の姉妹と思わしき反応のある場所へと急ぐ。



「見つけた!!」


「くっ、二人とも奴隷狩りに捕まってしまったみたいね」



 アレイナの姉妹は鎖で繋がれ、今にも馬車へ乗せられてどこかへ連れて行かれそうになっていた。


 加えて奴隷狩りのボスと思わしき者も見つけてしまう。


 俺は焦った。



「まずいぞ!!」


「ええ、急いで二人を助けないと!!」


「違う!! それも大事だが、よく見ろ!! 奴隷狩りのボスは女だ!! それも絶世の美女だぞヤッター!!」


「……あ゛?」


「あ、すみません」



 ちょっとはしゃぎ過ぎたみたいだ。アレイナの目が怖い。



「一体どうすれば……。下手に助けようとしたら、二人を人質にされるだろうし」


「大丈夫だ。俺にとっておきの考えがある」


「……真面目にやるんでしょうね?」


「モチのロン」



 俺は作戦をアレイナに話した。



「ロクでもない作戦ね」


「でも確実だろ?」


「……分かったわ」



 アレイナが頷く。


 さて、奴隷狩りハンティングの時間だ!!





――――――――――――――――――――――

あとがき

ワンポイントアレイナ情報。

何がとは言わないが、A寄りのB。


「主人公が本当にクズで草」「こいつホントに魔王か?」「そのワンポイント情報助かる」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。

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