二度目の異世界転生はスライムだった俺、エルフ三姉妹の最強ペットになりまして。

ナガワ ヒイロ

第1話 ぷるぷるスライムになりまして





「でゅふ!! このぷるぷる具合っ!! 俺のスライムボディーよりも柔らかく、それでいてスイカ並みのサイズ感!! この満足感が素晴らしい!!」


「あらあらー」



 俺は美女エルフの豊満なパイの谷間に全身を埋めていた。


 おっと、犯罪ではないぞよ。


 何故なら今の俺はスライムだから。ペット枠だから!! 多少のセクシャルハラスメンッ(ネイティブな発音)は許されるのだよ!!



「こんの変態スライム!! 姉様から離れなさいよ!!」


「あべしっ!! おい、ペット虐待だぞ!! 暴力反対!!」


「誰がペットよ!! あんたみたいな下心丸出しの変態ペットがいるか!!」


「ここにいますが何かぁ? あ、ちょ、やめて!! 無言のアイアンクローはやめて!! 死ぬ死ぬ!! 雑巾みたいに絞らないで!!」



 バインバインのチャンネーエルフと違い、ぺたんぬなエルフちゃんにアイアンクローで無理矢理引き剥がされる。


 そして、まるで雑巾でも絞るかのように身体を拗られて死を予感した。



「このまま全身の水分をひり出して死になさい、この変態スライム!!」


「んほっ、でゅふ、お、おお、これはこれで、悪くない!!」


「ちょ、なんで喜ぶのよ!!」


「美少女エルフからの罵詈雑言&暴力が嬉しくないドMなんかいるわけないだろうが!!」


「もうやだこいつ!! 姉様あ!!」



 その時、雑巾絞りされてる俺をぺたんぬ美少女エルフから奪い取る幼いエルフの女の子が一人。



「お姉ちゃん、スライムちゃんいじめるのメッなのだ!!」


「うぇ!? わ、私は姉様をその変態スライムから守ろうと思っただけで……」


「メッ!!」


「う、うぅ、わ、分かった、分かったから」


「プイッ。なのだ」



 俺をいじめていると思われたぺたんぬエルフがそっぽ向かれて凹む。


 対する俺は。



「でゅふ!! 元気ロリ巨乳っ娘エルフのパイパイ!! これはリンゴ並みの大きさ!! 柔らかさは焼き立てのパンのようだ!!」


「こんの変態スライムがっ!! 今すぐ妹から離れなさい!!」


「おうふっ、ちょ、そこは触っちゃ駄目だって////」


「!? こ、これ、私どこ触ってんの!?」


「言わせるなよ、恥ずかしいじゃねーか//// 強いて言うならチン――」


「ぬぅんッ!!!!」



 そのまま地面にべちゃっと叩きつけられる。


 普通のスライムなら即死だろうが、俺は普通のスライムではない。


 ダメージはこれっぽっちも入らなかった。



「ふぅ、日課のセクハラも済んだことだし」


「あんた今セクハラって認めたわね」


「ほらほら、今日も狩りに行くんだろ? ドラゴンみたいな大物は任せな」


「……はあ。普段からそういう感じなら素直に頼れるのに。ていうか、スライムがドラゴンを倒せるって何なのよ」



 俺はぺたんぬエルフの問いに答える。



「前から言ってんだろ。俺は元勇者で元魔王。ドラゴンなんかちょちょいのちょいよ」


「どこの世界にあんたみたいなセクハラ勇者とセクハラ魔王がいるのよ」


「ここにいますが何かぁちょ、先読みしてアイアンクローはやめて!! 潰れちゃう!! 俺の大事なところで潰れ――あふ!! わ、悪くないな!!」


「ホントにこいつやだ!!」



 しかし、まあ、全て本当のことだ。


 最初の人生はこの世界に召喚された勇者で、魔王を倒したものの、その力を恐れた王侯貴族の謀略で仲間に裏切られて処刑された。


 二度目の人生は魔王に生まれ変わったため、人類に復讐してやった。

 だが、一度目の俺と同様に召喚された勇者の手で殺されたのだ。


 本当に運の無い人生だったよ。


 でも二度目の転生、三度目の人生ではスライムになり、美少女エルフ姉妹のペット枠になった。


 でゅふ!! こりゃ楽しまなきゃ損でしょうや!!


 俺は今に至るまでの出来事を、ふと思い出すのであった。













「これで終わりだ、魔王!!」


「がはっ」



 勇者の聖剣が俺の心臓を貫いた。


 聖剣の力、魔王の血液を凍らせる力が作用して、全身が途端に冷たくなる。


 ……ああ、いってぇ……。



「はあ、はあ、僕の、勝ちだ!!」


「……ふふ、はははは」


「……何がおかしい?」


「いや、何もおかしくない。人類を滅ぼそうとした魔王が死ぬ。それだけの話だ。ただ、俺と全く同じ台詞で笑っちゃったんだ」



 勇者が首を傾げる。


 当たり前の反応だろう。

 この台詞の意味が分かったら、そいつは絶対に超能力者だ。


 捕まって研究機関に連れて行かれる。 



「俺はな、元勇者なんだ。前世はお前と同じ日本で生まれ育ち、この世界に召喚された。当時の魔王を、魔王軍を力のままに蹴散らしたもんだよ」


「っ、だ、だったら、どうして人類を滅ぼそうとしたんだ!!」



 俺は視線を逸らしながら、答える。



「裏切られたんだよ。仲間にな」


「な……」


「俺の力を恐れた王侯貴族の謀略でな。捕まって、処刑されちまった。そしたら竜に転生しちまったんだ。俺ぁ昔っからやられたらやり返す主義でさ。最初は俺を処刑した国を滅ぼした」


「……」


「でも気分が晴れなくってなー。だから、他の国も滅ぼして、滅ぼして滅ぼして滅ぼして。止まらなくなっちまった」


「……魔王……お前は……」


「止めてくれてサンキューな。お前はいい勇者だと思うぜ。旅の途中で困ってる人を助けまくって。魔王を倒すことだけを考えてた俺とは違う。……お前は、俺みたいにはなるなよ」



 俺の言葉に勇者が力強く頷いた。



「ああ。分かった」


「ふっ、ははは。じゃあ、地獄の底でお前さんを見守ってるぜ」


「……お前が地獄で罪を償って、天国に行けることを願ってるよ」



 そうして、俺の二度目の人生は終わった。


 こう、なんかせっかくいい感じで終わったと思っていたのだが。



「あー!! 楽しかった!! 数十年にわたる長編映画を見てたような気分だよ!!」


「おいこらクソ女神!! 今回は大人しく死なせろや!!」


「いやいや、今の君は死んでるよ? ボクと話してるのは君の魂だけだからね」



 俺は地獄にも天国にも行けず、可愛らしくも邪悪に微笑む少女と対峙していた。


 彼女はこの世界の女神だ。


 女神と言っても、間違いなく邪神の類いだろうけどな。


 勇者だった俺を魔王に転生させた張本人だし、世の中で起こる不幸は大体こいつのせいと思って良いだろう。



「えー、流石にそこまで邪悪じゃないよ。ボク、悪い邪神じゃないよ!!」


「さらっと人の心を読むな」


「それはそうと、最後の死に方はすごく良かったよー!! 元勇者の魔王の終わりとしては満点あげちゃう!! チューしたいくらい!!」



 ならしてもらおうか!!



「え、いや、流石に冗談だよ? 何マジにしてんの?」


「はあ!? 純粋で無垢な少年の心を弄んでんじゃねーよ!! ぶち殺すぞ!!」


「純粋で無垢な少年はそんなこと言わないと思うけどね!? 大体君、ボクを邪神呼ばわりしてたじゃないか!! 邪神のチューなんか嬉しいの?」


「美少女だからな!! 俺はどんな性格の悪い女でもスケベなことしてくれるんだったら騙されても構わん!! なんだったら自分から騙されに行くぜ!!」


「こ、こいつ、ボク以上のクズだ……」



 ほら、チュー!! チュー!! ディープな方の!! チュー!!



「あーもう!! 誰が人間にチューなんかするもんか!!」


「神様ビビってる、ヘイヘイヘーイ」


「あ、そう。そういうこと言うんだ? ふーん。ボクを楽しませてくれたお礼に来世は裕福な家庭に生まれさせてあげようと思ったけど、やっぱり気が変わった!!」


「いや、ほんの冗談じゃないっすか、女神様!!」


「今更媚びを売ってももう遅いよ!! 下級モンスターに転生して新人冒険者に殺されちゃえ!!      えい!!」



 俺の意識が次第に遠のいていく。


 くっ、この邪神め!!

 顔が可愛いから少し優しくしたらつけ上がりやがって!!


 今度会ったら絶対にチューしてもらうからな!!



「しないよ!! ぷん!!」



 女神がそっぽ向く。


 ちくしょう、やっぱ性格は最悪でも仕草が可愛いじゃーか。


 さてさて、勇者、魔王と来たら次は何に転生するのだろうか。


 下級モンスターと言っていたが……。ぷるぷる。


 んん? このぷるぷる感とまんまるボディーは。



「おお!! 勇者だった頃におっぱいの感触と同じって聞いて触りまくったから覚えてるぞ!!」



 間違いない。


 理想の柔らかさを追い求め、魔王討伐も一時期放り出してスライムを触りまくっていた、あの懐かしい日々。


 仲間の女の子にゴミを見るような目で見られながらも探し求めたのは良い思い出だ。



「まさか俺がスライムになっちまうとは……。待てよ?」



 俺がスライムになったということは、勇者時代の俺のようにおっぱいの感触を知りたくて触ってくる輩がいても不思議じゃない?


 うわ、キモ!! 無理!! 男に触られるとか絶対にやだ!! どうせなら美少女がいい!!


 ……よし。

 今回の人生、いや、スライム生は異世界モノのライトノベルでありがちな最初の仲間になるスライムっぽく生きよう。


 そして、きゃわいい女の子と仲良くなる。


 あわよくばその女の子とスライムプレイなんかしちゃったりして!!


 でゅふ、でゅふふふふ!!!!



「ん? なんか騒がしいな」



 どこからか人が言い争う声が聞こえてきた。


 これが野郎同士の喧嘩なら無視するところだが、女の子の声も混じっている。


 よし!! 女の子、それも美少女だったら助けよう!!



「この!! 離しなさいよ!!」


「おうおう、活きが良いじゃねぇか。おら、大人しく里の場所を言え。正直に言ったらお前は売り飛ばさないでオレたちの奴隷にしてやるよ」



 おっふ、エルフ美少女!! 今、助けるぜ!!







――――――――――――――――――――――

あとがき

ワンポイントスライム(主人公)設定

敵が美少女美女だったら見逃すが、男だったら即デストロイする勇者だった。スライム体の声はリ◯ルみたいな可愛い声じゃなくて、低めの渋い声。


「まごうことなきクズで草」「魔王としての最期はなんだったんだ」「スライムのチンはどこなんだ……」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。

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