社会人になってみた!
Unknown
社会人になってみた!
ユーチューブで「歌ってみた」とか「踊ってみた」とか「弾いてみた」って動画がよくあるけど、それと同じような軽いノリで俺は再び社会人になってみた。幾星霜の時を経て、俺は社会に再び君臨したのである。“魔王再臨”と言ったところか──。
10時とか15時の休憩時間、職場の喫煙所でタバコを吸ってたら、俺と同世代くらいの先輩が俺を話の輪の中心に入れてくれたので、そこで少し周りの社員と打ち解ける事ができた。昼休憩の時も俺は少し喫煙所に行って、できるだけ会話に加わるようにした。コミュニケーションの入り口としてタバコは有効だ。俺は根暗だから、自分なりに精一杯明るく振る舞った。
俺が周囲と打ち解ける努力をしている事には意味がある。
結局、仕事で一番大切なのは人間関係なので、周囲に打ち解ける最低限の努力はしないといけないのだ。それは前の職場で学んだ。自分から心を閉ざしてしまうと激烈に職場に居づらくなる。自分も周りも得しない。だから苦手な事も少しは無理しないといけない。やっぱりファーストコンタクトで与える印象が悪いと、働く上でなかなか不利だ。今後の自分を楽にする為に、俺に可能な範囲で明るく振る舞っている。
なので俺は非常に疲れている。
俺は「人に好かれる会話テクニック」的な本もわざわざ買って読んだ。俺の脳にインプットし、実践している。自己啓発本も悪くねえ。
職場の人は大半が良い人だと思った。一部、嫌な人もいたがそれは仕方ない。完璧な職場なんて存在しない。
頑張っていれば誰かが絶対見てくれる。
仕事内容そのものより、俺にとっては人間関係の方が遥かに大きい懸念材料だ。
◆
仕事中、俺は恋人のことばかり考えている。俺のアパートから車で片道1時間30〜40分くらいの場所に彼女が住んでいるから、あまり簡単に会える距離ではない。彼女が俺の近くに引っ越してくれれば毎日会えるんだが、彼女にも事情がある。
でも彼女自身、いつか俺と一緒に住みたいと言ってくれているので、俺が仕事を辞めることなく安定できるようになったら同棲も視野に入れる。俺の住むアパートは1Kだから2人で住むのはきつい。せめて2つか3つ部屋が欲しい。
俺の職場は完全週休2日制ではない。土曜もたまに出勤する。そして祝日という概念は無い。給料は高くない。でも俺は月に65000円くらいの年金を貰ってるから、それをプラスしたら割といい額になる。
会社に病気や発達障害を隠して一般雇用で働いてるから、年金はそのうち打ち切られるかもしれない。わからん。未来のことは何も分からん。
最近は自炊をするのが億劫だから、スーパーの半額弁当に頼っている。昼飯は面倒だから摂ってない。弁当に半額のシールが貼られる時間帯にはおっさんの客が多いから、なんとなく居心地がいい。
贅沢したい日は牛丼屋に寄る。すき家の唐揚げ定食がめっちゃうまいから、気になる人は食ってみてほしい。
今は金を貯めたいから、1日3食も食ってる場合ではない。
金持ちになりたいとは思わないが、金は無いよりあった方が絶対に良いのは間違いない。
金では買えないものの方が金よりも大切だが、金では買えないものの維持には金が要るのだ。
つまり、彼女と幸せでいる為に金が要る。だから俺は働く。まともなふりをして頑張る。
限られた金の中で生活しないといけない。仕事を始めて、必然的に酒とタバコの量は減った。これだけでもだいぶ節約になる。
深酒しないように、アパートに帰ってきたら晩酌のビールを1本か2本だけ飲んでいる。ちなみに俺はサッポロ黒ラベルが好きだ。
ストロング系の酒を何本も飲んだら翌日に残ってしまう場合がある。そしたら仕事に支障が出る。いっぱい飲めるのは金曜の夜と土曜の夜だけだ。
働き始めの1ヶ月くらいを乗り越えたら、割と楽になると思う。今は正直かなり精神的にきつい。かなりのブランクがあるからだ。俺は今までのツケを払ってる最中だ。朝は吐き気がする。だが、仕事を終えてタイムカード押して退社して真っ暗のアパートに帰ってきた瞬間に、俺は心地の良い疲労や孤独を感じている。
どこまでやれるかは分からない。でもやってみる。やると決めたからには、やるしかねえ。
出勤前、俺はKing Gnuの「Flash!!!」を爆音で聴く。そうするとやる気が出る。曲自体も最高にかっこいいが、歌詞がめっちゃ良い。元気が出る。
朝は暗い音楽は聴けない。会社に行きたくなくなるから。
syrup16gの「翌日」を聴いてから出社する事もある。翌日はsyrup16gの中では1番明るくて前向きな曲だ。勇気が湧く。俺の背中を押してくれる。
俺はかっこよくないし金も少ない。だが平凡な幸せが俺はずっと欲しかった。何故なら平凡である事は俺にとって1番難しいからだ。
あえて難しい事に挑戦してみた。
今後、悩み苦しむ時も絶対に来る。だが、それは全人類みんな同じだ。その頻度が多いか少ないかだけの違いしかない。人間なんて大体がクズな面を持っている。それでいい。
文章では俺は偉そうな事を書いてるが、所詮はハリボテなので、この勢いがいつまで続くかは分からない。神のみぞ知る。
もし急に鬱がぶり返して動けなくなったりしたら、その途端に俺はくたばる。
◆
彼女と俺は、ぬるりと付き合い始めた。特に明確な告白とかは無かった。
ファーストコンタクトで、なんかいいなと思った。
彼女の存在に誰かの面影を重ねるのは、彼女にかなり失礼なので、もう過去のことは全部忘れた。これでいい。人間、そうやって色々忘れながら生きていくもんだ。
人間は過去を忘れるから生きていける。
俺は今、生きてる時間の7割くらい彼女のことを考えてる。常に考えてるわけではないけど、自分の事と同じくらい彼女の事を考えている。
俺の人生を半分あげるから、あなたの人生を半分くれ。
とか言ったら重いから、何も言わない。
◆
俺は特に人生の目的や夢が無い。笑って生活できたらそれでいい。楽しく生活する為には、苦労や負担が必要だと思う。
金曜日に退社した瞬間が1番幸せであるように、真のカタルシスを得るにはストレスが必要だ。
マラソンを走り切った後の爽快感が本当に気持ちよかったのを覚えている。
労働はマラソンみたいなもんだ。ゴールしたら休日が待っている。
あと、鬱積の浄化という意味ではエロスとカタルシスは似ている。
◆
彼女は内向的だが心がアクティブだ。だから俺が退屈してる暇が無くて楽しい。
彼女の趣味を、俺もやってみたりしている。
彼女の好きなアーティストを俺も聴いたりしている。俺はデスメタル以外だったら何でも聴く。
なんとなく性格の根っこが似ている気がしている。
彼女は街の喧騒を嫌う。声のでかい人を嫌う。扉を閉める時の勢いが強い人を嫌う。俺もそうだ。
だからなんだ。
誰もいない夜の静かな公園でベンチに座ってジュース飲みながら2人で語らったりするのが俺は好きだ。
彼女が歩んできた人生や歴史や思想や文化、それらを理解したいと俺は思う。
◆
この文を書いてるのは平日深夜1時だ。
そろそろ眠剤を飲んで寝る。
おやすみ。また今度。
ところで、11月9日に「龍が如く7外伝」が発売されるようだ。俺は発売日にゲーム屋さんで買って遊びまくる。楽しみ。生きる理由はいくらでも作れる。新作ゲームを遊びたい。それが生きる理由でも一向に構わん。
借金、失業、病気、失恋、孤独。死ぬ理由はこの世にいくらでもあるけど、よく周りを見渡せば、生きる理由だってこの世に沢山ある。俺はとりあえずゲームやりたい。あと日本シリーズの勝敗も気になる。阪神とオリックス、日本一になるのはどっちかな。
じゃあな。
終焉
社会人になってみた! Unknown @unknown_saigo
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