第4話ハロウィン鬼ごっこパート4

壱番街街中

春猿火達が走りながら理芽をおっていると、幸祜が一つの提案を口にした。

「春ちゃん、確か役所に行くって理芽ちゃん言ってたね?それだったら私とシエルンで先回りするよ」

「できるのココス?」

「ネ祜がいるからね。一気にワープするよ」

幸祜の右肩からネ祜が唸り声をあげて、シエルはそれを見て驚いた。

「分かった、二人ともお願いね」

「了解!シエルン、私の近くに来て」

シエルは近づくと、幸祜は肩に乗っていたネ祜の頭を撫でて「お願いね」っと言い、ネ祜は口を大きく広げた。

それを見たシエル思わず目を瞑り、二人はネ祜に飲み込んだ。

シエルが目を開けると、そこはさっきとは違う風景が目に入った。

それに驚いている横で幸祜はネ祜を撫でていた。

「ありがとう。いい所にワープしたね」

幸祜はそう言い、ネ祜を手のひらに乗せると、シエルが声をかけてきた。

「ネ祜ってそんなこと出来るんだね」

幸祜が胸を張り、得意げに自慢した。

「それは私の描いた猫だもの!ワープ出来て当然だよ!」

「いや、普通猫はワープできないよ」

ツッコミを入れると、シエルは背後から気配を感じて振り向いた。

「ココス・・・」

「うん、思ってたよりも早いね」

二人が見たのは、花譜を大事そうに抱えている理芽だった。

すると、幸祜が思ったことを呟いた。

「ああしてみると、王族の赤ちゃんを誘拐したドラキュラって感じがするね」

「ふふ、確かに」

そんな会話をしていると、理芽は二人に気づき足を止めた。

「二人とも早過ぎない?」

その言葉に幸祜に笑った。

「ふっふっふ・・・私にかかれば造作もないことよ。さて・・・」

幸祜は理芽に手を伸ばした。

「花譜ちゃんを返してもらうよ、理芽ちゃん」

反射的に身構えると、幸祜とシエルは少しずつ近づいた。

後ろを少し見て、春猿火とヰ世界情緒がいないことを確認すると、マントの内ポケットを探り、シエルに話しかけた。

「シエルン、そこ退いてくれない?」

「ダメです」

「そっか・・・退いてくれたら、これあげようと思ったんだけどな・・・」

理芽はポケットからある物を出すと、シエルは目を見開いた。

「そ、それは・・・!」

その反応を見て、理芽の口角が上がった。

理芽が取り出したのは、シエルの大好きな——紙袋だった。

「シエルン、紙袋が大好きだったよね?そこ退いてくれたらあげるよ」

その誘惑に取り込まれそうになったが、シエルは首を振った。

「た、確かに欲しいけど・・・花譜ちゃんと比べたら・・・紙袋なんて入りません・・・!」

拳を強く握りそう宣言すると、理芽は不敵な笑みをした。

「いいことだね。ところで・・・私がいつ、紙袋一つで退いてって言ったかな?」

その言葉にシエルは驚くと、理芽は二枚の紙袋を取り出した。

「シエルンこの前好きな紙袋のこと言ってくれたよね?」

「ま、まさか・・・!」

シエルは動揺を見せると、理芽は追い打ちをかけた。

「フフ、これだけじゃないよ。シエルンがあるお店の紙袋が欲しいって言ってた紙袋も追加するよ」

理芽は再び紙袋を一枚取り出して、紙袋を左右に振った。

それと同じようにシエルも首を動かした。

そして、理芽が紙袋を右に放り出した瞬間、シエルは勢いよく紙袋に向かって走り出し、近くの建物のガラスを割った。

「シエルン!!!」

幸祜が叫ぶと、理芽はシエルの目を向けた。

シエルの体は所々にガラスの破片がついているが、殆ど傷はついておらず、とても幸せそうな表情をしながら紙袋を握っていた。

「すごいな・・・」

理芽は若干引きながら呟くと、幸祜が左手で顔を覆い、右手の人差し指で理芽に指した。

「ふっふっふ・・・彼女は四天王の中でも最弱・・・私はそう簡単にやられないよ理芽ちゃん・・・」

ネ祜を腕に纏わりつかせて臨戦態勢を取ると、理芽は再びマントの内ポケットを探った。

幸祜はそれを見逃すことなく、ネ祜を飛ばした。

ネ祜で拘束して、花譜ちゃんを取り戻そうと瞬時に作戦を立てて、実行する幸祜だが、何故かネ祜は理芽を拘束しなかった。

不思議に思ってるとネ祜は突然、幸祜から離れた。

「え!?」

いきなりのことに驚き、理芽の方を見ると謎は直ぐに分かった。

理芽の手に持っていたのは——チュールだった。

「まさか餌漬けをするとは・・・」

驚いていると、ネ祜は食べて終わると眠りについた。

理芽はネ祜を邪魔にならないところに置き、幸祜を見つめた。

「ココスも退いてくれない?あたしは一秒でも早く役所に行かないといけないの」

「はい分かりましたっとはならないよ理芽ちゃん」

それを聞いて溜息をついた。

「そっか・・・せっかくココスが好きそうなものをあげようと思ったんだけどな・・・」

理芽はポケットから一枚のチケットを取り出した。

そのチケットを目を細くして見つめると、理芽の持ってるチケットに驚愕きょうがくした。

「ま、まさかそれは・・・」

理芽は高々と、そのチケットを掲げた。

「そう、これはココスが好きなコナンの記念原画展のチケットだよ」

「そ、そんな・・・私は第一回と第二回抽選してもハズレたのに・・・」

悲しい事を言う幸祜を無視するかのように、理芽は言葉を続けた。

「それにねココス。なんとこのチケット・・・作者さんが読者の好きなキャライラストとして欲しいポーズを描いてくれるらしいよ。しかもサイン付きのね・・・」

「なん・・・だと・・・!」

「聞くのも意味ないけど、欲しい?」

ニヤニヤと笑みを浮かばせながら聞くと、幸祜は激しく頷いた。

理芽はシエルと同じように左右に動かすと、幸祜はその動きと同じように首を動かした。

そしてチケットを手から離した瞬間、幸祜は凄まじい瞬発力でチケットを取りに行った。

「チケットォォォォォォ!」

幸祜はシエルと同じように勢いよく近くの建物にぶつかり、目をぐるぐると回りながらもチケットを握りしめていた。

理芽は幸祜とシエルを気にもせずに、前に進んだ。

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