20 たぷたぷ
朝起きると、兄の生首はまた、床に転がっていた。彼は起きていて、僕が掴むと文句を言い始めた。
「おい、蹴飛ばされたんだけど」
「ごめんごめん。痛かった?」
「うん。本当に寝相が悪いな奏太は」
頬を撫でると、ガサガサとしていた。ヒゲもそろそろ剃らなければならないが、どうしたものか。
「兄ちゃん、保湿するやつ買ってあげようか」
「そうだな。乾燥してきたし」
生首の飼育者たるもの、コンディションを整えてやるのが使命というものだ。僕はリュックサックに兄を入れ、坂道を上り、ドラッグストアに行った。
基礎化粧品のコーナーを見たが、あまりに種類が多くてめまいがするようだった。テスターがあったので、それを開けてみた。ゲル状だ。柑橘系の香りで、手触りもいい。もうそれに決めてしまった。
帰宅して兄のヒゲを剃り、保湿剤を塗りたくった。量を間違えたのか、兄の顔はテカテカに光ってしまった。
「あははっ、兄ちゃん、たぷたぷー」
僕は兄の頬を両手で挟んで揺らした。
「もう、塗りすぎだろ。余った分は奏太がつけろよ」
「はぁい」
ふと、魔が差した。僕は下着に手を突っ込んだ。
「あふっ……」
するりと指が入り、僕は激しく動かした。兄はニヤニヤと口元を歪めた。全て脱ぎさってしまって、僕は本格的にしはじめた。
「奏太、気持ちいいのか?」
「気持ち……いいっ……」
達してしまう前に、兄にくわえさせた。僕は絶頂を迎え、叫びと共に吐き出した。
「たくさん出たな。可愛いよ、奏太」
もう、こんなことも恥ずかしくなくなってしまった。もはや生活の一部だ。僕は服を着て兄の頭を撫でた。
「兄ちゃんを飼えて良かったよ。僕、兄ちゃんを埋めた後の事はちゃんと考えてなかったんだ。こんな風に暮らせるなんてね。僕、今凄く幸せだよ」
「兄ちゃんは……微妙なとこだな。やっぱり身体が恋しいよ。奏太のこと、抱き締めてやりたい」
兄は下唇を噛んだ。でも、兄が悪いのだ。兄が無理やり僕を組みしだいたから。もう少し段階を踏んでくれていたなら、こんな結果にはならなかったのかもしれなかった。
「こうなったらもう仕方ないよ。兄ちゃんは僕が死ぬまでずっと、そのままでいるんだ」
「だな。首から上しかないけど、奏太の助けになってやるからな。兄ちゃんのこと、きちんと面倒みてくれよな」
そして、甘ったるいキスをした。保湿されて柔らかになった兄の頬を撫で回しながら。
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