2. 旬を求めて

  【ニュース】

「え~、コチラの映像を見ていただきたいのですが・・・少雨が続いているミータス地方の昨日の気象レーダーの映像です。」

「前日の予報では『雨』ということでしたが、実際には全く降りませんでしたねぇ。」

「はい。コチラご覧いただきますと・・・西からこう来た雨雲がですねぇ、ミータス地方にかかり始めたところで・・・このようにキレイに消えてしまっているんですよねぇ。」

「あぁ、本当ですねぇ。キレイに消えてます。」

「はい。こういうことが観測されることはこれまで無かったんですが、ここ数年ですね、各地で局地的に頻発している日照りや少雨の時に、時折見られるようになってきたんですよね。」

「あの・・・原因はどの辺に・・・?」

「いやぁ、それが分からないから我々気象観測士もですねぇ・・・」




  2. 旬を求めて


「アルポ~ン、来たよ~っ。」

「あら、お嬢ちゃん。いらっしゃい。」

「もう、この子ったら『今日も行く、今日も行く』って聞かないもんだから・・・。」

 すっかり顔なじみになったこの親子。アルポンがミータスの地を離れるつもりと聞いて以来、こうして連日通っている。

「ねぇ、アルポン。ホントに行っちゃうの?」

「うん。ごめんね、お嬢ちゃん。僕は、ずっと同じ場所には居られないんだ。」

「そうなの?ホントにダメなの?」

「あぁ。美味しいものを美味しく食べるには『良いタイミング』っていうのがあるんだ。」

「良いタイミング?」

「あぁ、そうだよ。だからね。今美味しいものがあるところへ行って、その材料で美味しいソフトクリームを作りたいんだ。」

「う~ん・・・そうなんだぁ・・・。」

「もう・・・ごめんねぇアルポン。この子ったら、駄々っ子に育っちゃって。」

「ううん、良いんだ。子供なんてみんなそんなもんさ。ねぇ、お嬢ちゃん。お嬢ちゃんが良い子にしてたら僕はきっとまた来るからね。」

「ホント?ホントにまた来る?」

「あぁ、来るとも。」

「ねぇ、いつ?いつ来る?」

「そうだなぁ・・・来年あたり、かな?」

「らいねん・・・?」

「あ~、お嬢ちゃんがもう少しお姉さんになったらね。」

「ん~・・・うん。分かった。」

「ねっ。だから、それまでちゃんとお母さんの言うことを聞くんだよ?」

「うんっ。」

「ふふっ、いいお返事だっ。で、今日は何にする?」

「じゃぁ、あたし『ヴェリーベリー』が良いっ。」

「ふふふ、じゃぁ、それを二つ。」

「はぁ~い『ヴェリーベリー』ねぇ。」

 澄んだ青空の下、ベンチに腰を下ろしニコニコと楽しげに会話をしながら食べる親子。幸せの塊のようなこの光景を、アルポンの作るソフトクリームがいくつも演出してきた。

「ねぇ、アルポン。次はどこへ行くつもりなの?」

「そうねぇ・・・北の方へ行ってみようと思ってるんだ。あの辺には前々から狙っていたやつがあってねぇ、そろそろ良い季節だと思うんだぁ。」

「ふふふ、アルポンって人生楽しんでるわね。」

「え~?そうかな?行き当たりばったりなだけだよ。」

「あら、ふふっ。アルポン、気を付けて行ってね。」

「うん、ありがと。」


 ミータスを離れ、北へと向かうアルポンの移動販売車。新たな地へと向かう高揚感か、軽い鼻歌など歌いながらハンドルを握っている。

「ふっふふ~んっ。はぁ・・・楽しみだなぁ~っ。」

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