断と絶

 私は足の激痛をこらえながら、


「陽菜。陽菜の足を切り落とそう。おじいちゃんそう決めたから。足を切り落としたら、赤ちゃんの頃みたいにハイハイして、爆弾の青い線を引き抜いて、鍵を取って来なさい。


そしてまたハイハイして戻って来るんだよ。あの頃は可愛かったな、陽菜。今は生意気になり過ぎた」


「ちょっと本気? マジで私の足を切り落とそうとしてるの? 孫だよ、可愛い孫だよ」

「大嫌いなおじいちゃんなんだろ」


「そんなことないよ、さっきはごめん」

「じゃあ一緒にお風呂に入って、久しぶりに体を洗いっこするか。それともあの頃みたいにチューでもしようか」

「キ、キモい」


「さあ、おじいちゃんのために、尽くすんだよ。体を張って、な」

 

 私は斧を振りかぶって全体重をかけて、陽菜の細い足首に振り下ろした。


「ギャーっ」

 

 右の足の肉に斧の歯が食い込み、骨に突き刺さった。血が噴き出し、顔に返り血を浴びた。陽菜は失禁したみたいで血とは違う液体が尻の下で水たまりになっていた。


「や、やめて、もう、マジやめて」陽菜は真っ青な顔で懇願した。


 だが私は斧を足から引き抜いて、もう一度同じ所に振り下ろした。「ぐえっ」陽菜はそう言うと、がっくりと首を垂れた。


 手に骨が砕ける感触がして、足首は切り落とされた。私は斧を置いて、陽菜の足についていた錠をはずし、血が脈々と流れる足首を手に持った。


 それを頬に当てて、すりすりと擦り付けた。可愛い孫の足だ。


「顔が血だらけですよ」お面男の加工された声がした。

「うるせえな」

 

 私は陽菜の左足に斧を振り下ろした。足首の肉がぱっくりと割れて、斧の刃が食い込んだ。骨の手前で止まっている。私は狂ったように何度も斧を振り下ろした。


 陽菜の足首が骨ごともげた。刃も床も血にまみれてる。足首にはめられていた錠を外した。これで陽菜は動ける。爆弾を止めて、鍵を取って来れる。赤ちゃんの頃のように、可愛くハイハイをしながら。


「陽菜、終わったぞ。爆弾止めて、鍵を取って来てくれ」


 そう言っても陽菜は首を垂れたままだ。


「おい、陽菜」

「気絶してますよ」お面男が言った。

「なんだよ、せっかく動けるようにしたのに、これじゃ意味がないじゃないか」


「早く起こさないと、あと3時間20分ですよ。失血死したら、元も子もないないですよ」 

「わかってるよ!」

 

 私はパソコンの画面に怒鳴った。


「あと、それと」

「なんだよ」

「この地下室の映像は配信されてますから。あなたが可愛いお孫さんの細くて愛らしい足を、斧を振り下ろして斬り落とした場面も、その足首を持ってスリスリと頬ずりしてる所もしっかりと見られてますからね」

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