第112話  落とし穴の中

最後に僕が残った。結界の中、神様達が沈んでいる。「これはあくまでも懲らしめるためだった。本気じゃんなかった。」賀茂君に言い寄る。

「トダ、僕が本気で君達神様の手伝いをするとでも?」

「賀茂君と、一緒にヤカラも倒した。僕らは友達じゃないのか?」

「おめでたい神様だな。やっぱりトダはおバカさん。人間ぽいよ。だから、だましやすかったんだ。トダは弁天の様子がおかしいのに気づいていたよね。弁天の方が鋭いよ。僕の行動を監視ていたよ。恋愛感情あるわけない。その変わりその情報を逆に利用してニュウに与えた。ここは僕の陣地だからね。」

僕は混乱していた。口から出た言葉は「天上界では優秀な成績の僕。この僕が人間にだまされるなんて。ありえない。ありえない。」なんて無様な言い草なんだ。こんな、人間の負け惜しみみたいな言葉を発するなんて。僕は・・・

にやり賀茂君が「こう言いたいのかなトダ君。全く無様な人間のようだとでも」

「違う。違う。僕は神様だ。人間なんかじゃない。」

「ほらね。人間なんかって言ったよね。今、言ったよね。神様もそうやって僕らのことを見下しているのさ。誰が決めたんだ。神様が偉い。神様が強いって。人間の僕にこうして大人の神様も君もトダつかまって負けてるのにな。ははは。笑えるよ。負けをみとめなよ。」

僕の脳内はまだ混乱をしている。

また僕は口走る「そうだな。情けない。人間に負けた。僕が神様で強いのに。くやしい。」

賀茂君の目がいっそう細く冷たくなる。「おちろトダ。勝ちは僕さ。」

結界の縄で縛られ落とし穴に落ちて行く僕。

僕の意識が「そうか。神様が偉いなんてないんだ。人間も神様も一緒なんだ。どちらも偉くない。どちらも強くない。完全体はどちらもない。心が折れた方が負けだ。だったら僕は、今気づいた。僕はWOO----遅くない。」落ちてゆく途中で結界の縄が切れる。僕のカラダを落とし穴の中から風が包む。風神。

「丸太郎!ありがとう。」

「さあ、行けトダ。」

僕は穴の中から賀茂君の目の前に、そして思いっきり。「バーン」頬を殴った。

気持ちが良かった。この感情も人間ぽいか。まあ、いい。

「賀茂、お前は間違っている。」

「人間を餌に生贄にするトダ、お前に言われたくない。」

「そうだな。神様も正しいとは限らない。悪い神様かもな。それでも僕は僕だ。」

「開き直るな、トダ。」言葉と同時に賀茂のパンチが僕の頬に入る。

「くそー。」


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