第107話 賀茂と弁天
僕と氷川は学食で石丸家の火祭復帰と夏祭の文言を考えていた。
「賀茂君達は大丈夫かな?」
「大丈夫だろう。トダ、ニュウに見張りを依頼してきたんだろう。」
「そうだな。僕らはこの招待状の文言を早く考えよう。」
僕は意識の半分ニュウに飛ばした。
賀茂家の庭にみんなが見える。
サラはニュウとともに短い結界をつなぐ作業中だ。
弁天が「賀茂、結界これで弱くないか?」
「いや、これで大丈夫だ。短い結界が弱く見えるが、短い分、強度が高い。
大人の神様達を落とすにはこのくらいでちょうどいい。それに結界の中の落とし穴は僕の式神が掘っている。すべて順調だ。」
賀茂君は弁天の目を見て答えた。一緒に作業しているうちに美人の顔が当たり前になって見慣れて来ている。”恋愛感情でも慣れはこわい。“
サラが「賀茂、この家で式神と暮らしていて寂しくない?私は両親いないけどおばあちゃんと一緒だから大丈夫。」
「寂しくはない。慣れたし、これが普通だ。」
「そうなんだ。じゃあ、弁天がここに住んいい?」
「えっ!サラからかわないで。」弁天が赤くなる。
「賀茂は弁天のこと好き?」
賀茂君が「好きさ。」
サラが「ニュウ、神様と人間の恋愛ってできるの?おばあちゃんも人間のおじいちゃんと恋に落ちたようだけど。」
ニュウが「僕は特殊能力で縁を見ることができる。神様の弁天と人間の賀茂は縁がない。賀茂の意志が弱い。そのせいで縁の糸が細く弱い。弁天との糸と結べない。結んでもすぐ切れる。賀茂は心のどこかで人間と神様は恋愛対象ではないと思っているようだ。
賀茂の無理だと思ったモヤモヤの気持ちが糸をより細く頼りないものにしているようだ。縁があるのに自ら切ってしまう残念なパターンだ。この二人は。」
賀茂君が「悔しいがニュウの言う通り。弁天のことは好きだが、神様と人間恋愛は無理だと思っている。」
弁天が「私も賀茂のこと好き。」初めての告白だ。賀茂君が固まる。
ニュウが「生きる時間が違っても恋愛は自由だ。人間も神様も。」
サラが「よかったね。弁天、賀茂。」
「だな。今いる。一緒にいる。それだけで十分だ。」
「そうね。私もよ。」
賀茂君は手をかざし「よし。もう少しで落とし穴の円がつながる。がんばるぞ。」
ニュウからの連絡。”弁天のおかしな状況は単なる恋愛感情によるものです。害はないです。報告以上。”
「そっか。」氷川が「どうしたトダ?」
「ニュウから報告だ。もうすぐ落とし穴の結界の完成だ。」
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