第106話 氷川人間界デビュー
僕は「氷川、大人達に僕らの所在地を探られた時に学校だと何かと言い訳が作りやすい。それに部活中のキリもいる。学校へ行こう。」
「トダ、いいアイデアだ。」
校門へ入る。僕らは学食へ。夏休みの学食は広い話すには最適だ。それにここには境界線への歪みがある。時間時計。天上界の神様氷川がいても、息苦しさは、ないだろう。
それに昼のこの時間は、夏休みだが、部活もあり、一般の生徒もいる。紛れるにはちょうどいい。
しかしこのままだと氷川の姿は人間側からは見えない。不自然だ。
「氷川、こっちだ。」たぶん大丈夫だ。自販機に確かカップ麺。
「ピーッ」と音が鳴り「できた。」
「トダ、これは何だ?」
「人間界で最速にできる食べ物だ。まあ、食べてみろ。」
「熱い。麺?ずるずる。」氷川が固まる。
「おいしい。トダ、人間界には時間もかけずに、
まるでお茶を入れるように食べものができるんだな。面白いよトダ。」
「そうだな。シンプルな天上界の食べ物とは違うな。」
「何でご馳走してくれるんだ。」
「理由か?ガラスに映った自分を見ろ、
氷川。」
「映ってる。」
「そうだ。人間界に実体があった方がいいだろう、氷川。それにその方が本来の力が出せる。人間界での実体獲得のために人間界の食べ物をカラダに取り込む。カップ麺はそれに適した最速最強さ。」
「人間界の食べ物はすごいな。トダが羨ましいよ。」
「そうか?しかし気をつけないと、知らない間に色んなものに侵食される。」
氷川は聞こえてなかったらしく、カップ麺をすすっている。」
ヒイラギさんが言っていたことを思い出た。
“今いるところのものをしっかり食べて。今いるところの勉強もね。”
たぶん土地のものを食べるとその土地のエネルギーをもらうことができると言いたかったのだろう。人間界の人間は単独で僕ら神様のような力はない。しかし仮ものの力を使うことはうまくい。土地の力。食べものの力。そして太陽や月、雨、雷の力、そして僕ら神様の力まで
仮て、はじめから存在した自分の力かのようにする。改めて考えると人間界の人間は欲深い。厄介なものなのかもしれない。
「トダー。夏休みなのにどうしたんだ?
横、友達?転校生?」
弓道部の山下に氷川が見えてる。
「前の学校の友達。氷川だ。」
氷川も箸を止めて「こんちわ。」ペコんと頭を下げた。まるで人間の高2の男子だ。
恐るべしカップ麺パワー。
「じゃーなあ。トダ、氷川君。」
氷川人間界デビュー。
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