第87話 塔の中のトダ
僕らは塔に入った。1階は特に変わったことのない普通の広い部屋だ。右手に螺旋階段。
「誰もいないみたい。」ミユが拍子抜けしている。タクヤも「ちょっと構えたが特に剣や槍を持った兵士も魔物もいないようだ。よかった。安心だ。」
僕はみんなに「でも気を抜かないように何かの気配を感じる。キリ、何か感じないか?」
トダを意識し始めたキリは、巫女としての力が鈍っているようだ。石丸、お前はどうだ?」
「上の階から気配を感じる。」
「賀茂君は?」
「間違いなく、上にいる。」
「サラ、弁天お前たちも同じか?」
弁天が「感じるけど、この気配は天上界人じゃないの?」
僕は「そうだ、僕らと同じ神様だ。しかも、かなり力の強い神様だ。」僕の言葉が終わるのと同時に階段から白い衣の神様が降りてきた。
“誰だ”僕らは目を凝らした。
「トダ?」サラが一番に声をあげる。
「よく辿り着けましたね。褒めてあげましょう。」
「待て、お前は誰だ?はじまりの神様、七色髪のトダではないな!誰だ。」
「僕は君たちが探している“あの方”だと思うが。それに僕も君と同じトダだ。ほら、顔も君にそっくりだ。」
キリが「ふざけないでトダは、ここにいるトダだけよ。顔がおんなじだからって中身はぜんぜん違う。」
白い衣のトダがスーッとキリの目の前に降りた立った。そして顔を鼻が付く距離までつめた。
キリの顔が引きつり赤くなる。
白い衣のトダはキリに「ほらね。人間なんてこんなもんだ。結局中身は見ていないんだ。」
白い衣のトダは僕の方を見て「トダ、君も本当は気づいているんだろう。人間が愚かなだと。それともはじまりの七色髪のトダのようにあの世界でふわふわ生きていくつもりなのかな?
第二のはじまりの神様トダ。そんな人間をかばうようであれば、天上界はこの僕がもらうよ。
いいのかな。」
キリが白い衣のトダの頬を平手で叩いた。
「ふざけないで。あなたとトダは全くの別よ。トダは君のように意地悪じゃない。」
「痛いな。シラウオのように綺麗な僕の頬が真っ赤になったじゃないか。」
白い衣のトダは躊躇なく階段からキリを突き落とした。
「キャー」みんなが叫ぶ。
キリは声が出ない。真上を見て落ちて行く。
僕は全身全霊の力を使い時間を止めた。僕と白い衣のトダ、弁天、サラ以外止まっている。
僕は宙を飛びキリを抱き抱え、サラに託した。
僕は宙を舞、白い衣のトダの襟を握り締めた。次の瞬間、白い衣のトダは消えた。
掴んだ感触だけ残る。
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