第75話  駅前公園・カラス

僕は意味がよくわからないまま苦笑する陰陽師の賀茂君を見た。青い炎は消え、いつも通りだ。良かった。ただ、弁天を好きなのに、賀茂君は、なぜ口に出さないんだろう。人間の行動は理解しがたい、ややこしい。神様は、こんなに単純なのに。色んなものが嚙み合わないまま、僕らは歩き駅前公園に向かう。高校生9人歩く。道を占拠。すれ違う人がチラリ僕らを見る。僕はにっこり目を合わせ頭を下げる。すれ違う人の目が和らぐ。こんなことを繰り返し、駅前公園についた。

タクヤが走る。「ブランコだ、乗ろうぜ。」レンも賀茂君も走る。3つのブランコ占領。

みんなの顔が子供になる。

スーッとカラスが僕の目の前に。

「ようやくたどり着いたなトダ。」「君は誰?」

「俺様は妖精シュウの友達さ。」

「君は良いカラス?悪いカラス?」

「相変わらず、神様はストレートだな。俺様は良いカラスだ。もちろん妖精シュウも良い妖精だ。」カラスの目が青に変わる。

「カラス君、嘘は良くない。目が青だよ。」

カラスは両手、いや見間違えた両羽を大きく伸ばしてバタバタさせた。しかし何か違和感が。カラスじゃない。人間?が変身している。僕には見える。

カラスはみんなを指さし、「トダ、見ててご覧、もうすぐ彼らは小さい子供になる。10分経過。1分1年の時間が戻る。はい5歳児の出来上がり。面白いだろう?」

「えっ?何をしたんだ?」

「何もしていない。ここの磁場がそうさせた。なあ、妖精シュウ。」

「グレーの羽根の妖精シュウが目の前に現れる。」

「こんにちはトダ君。」妖精シュウだ。しかし実体がない。

「こんにちわ。火祭の巫女の石丸の神社と陣地を返してくれないかい?」

「何のことかな?」「君が霧島ユイと八幡先生をだましたこともわかっている。人間への復讐?」

「それもある。良い人間を困らせたかった。僕と同じ絶望を与えたかった。」

「それで君の心は晴れた?」僕は妖精シュウの後ろのカラスに聞いた。

「カラス君、妖精シュウは幻だね。存在していない。きっと人間にあの時に消滅させられた。この妖精はカラス君が造った悪い妖精シュウ。悪い妖精シュウが君の友達?シュウは喜ばないよ。」

「わかってるさ。」カラスのカラダが人間の子供に変身していく。「君は?」

「良い妖精シュウに助けられた人間さ。僕もシュウと消えるよ。ごめんなさい。」

子供と妖精シュウの幻が消えかかり。「あの方には気をつけて。」言葉を残し消えた。

またあの方か。




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