第64話 2冊の本 時越え鳥 •妖精

僕は部屋に戻った。

サカキはまだ寝ている。天上界へ行っている間の時間は人間界では止まっている。

時越え鳥は名前の通り、時空を自由に飛び回る。七色髪のトダが造った鳥だ。鳥は話すこともできる。鳥は昼間は飛ばない。夜のみに飛ぶ。

月明かりに照らされ七色の光を放ちながら。

そういってたな。時越え鳥を造った本人のトダが言っていた。間違いがない。夜行性の鳥か。珍しいな。きっとこの本も元をただせは、はじまりのトダが書いた本に違いない。捕まえる方法や言葉でも残していてほしい。それからもう1冊は妖精の本だ。初代サカキは妖精だ。良い妖精だった。妖精の歴史が書かれた本、こちらは良く読まないといつから悪い妖精になったのかのわからない。

サカキが寝ている間に。

一冊目、ページをめくる。時越え鳥だ。文字のごとく時を越える鳥。出没場所不明。気まま。昼間は太陽に照らされ、体力を消耗するため動かない。飛ばない。

時々、起きて食事をする。大好物はコーン。

「なーんだコーン豆か。やっぱり、鳥だな。えっ?」

ただしポップコーンも可。ポテチもOK。それにコーラも。と書いてある。

「はあ?」

僕は時越え鳥の奇妙な生態に驚いている。

読み進めると、なんだこの鳥。

本の続きは、こうだ。

趣味、漫画にゲーム。アニメに至っては深夜の東京Mー局がお気に入りだ。

できれば転スラもののハッピーエンドのアニメが好みだとか。

なんだこの本?と言うよりなんだこの鳥。完全にオタクじゃないか。太陽が苦手だとか、きっと鳥のくせにダブダブのトレーナー着てるんだろうな。

出没場所不明。いや、そこはアキバに決まってるでしょう!えっ?

真面目な僕がこの奇妙な時越え鳥の本を

読んでいるうちに僕自身がその奇妙な世界に引き込まれそうになっている。

「危ない危ない。」

きっと自由に時を越えて飛んでいるため、時越え鳥の振り幅は大き過ぎる。

きっと今頃はネットの前でゲームでもやってそうだ。たぶんゲームのない、ここヒイラギさん宅には決して立ち寄らない鳥だ。

案外、丸太郎に似ているかも。どちらもフットワークは軽そうだ。自由だ。

しかし、捕まえるとしたら?

僕は次のページをめくった。何やら地図が書いてある。時越え鳥の人間界での滞在先。

それはかなり大まかな地図だ。

駅からまっすぐ家々の間を通って天野家の隣の隣。レン宅。えっ?あのレンなのか?

レンはゲーマー?

とにかく手がかりは見つけた。明日レンの家へ行こう。

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