第62話 再び天上界へ学食

白いモクモク雲がいっぱい。ここは?

天上界か。僕は再び天上界に戻った。天上界にいると不思議なことに疲れない。

人間界と時間の流れが違うからだろう。しかし、無の天上界にも時を刻む時計がある。人間は生まれてから一方通行にカラダの機能が停止までの時間を帯のように歩く。たまに神隠し、我々の力が及んで逆戻りも異次元へ行くこともあるが大半は一方通行だ。

「ボーン」時の鐘が鳴る。

昼だ。氷川が学食にいるはずだ。「おーい、氷川。」

「トダ?どうした。今、人間界は真夜中のはず。50億年前の神様戦争から戻ったばかり。カラダは人間界仕様じゃないか?大丈夫か寝ないで。」

「大丈夫だ。天上界は時間の流れがちがう。それに自分の意志ではなく連れてこられた気がする。」

「そうか。」

神様は基本的につるまないとサカキは言ったが、基本僕もそうだ。

しかし氷川に弁天は僕が心から信頼する仲間だ。「トダ、何か手伝いが必要なのか。」

「そうだな。しかし、まずは腹ごしらえと。」僕は久しぶりに神様学校の学食を食べた。五穀米に野菜に魚。旬の果物スイカがでた。味は塩味のみ。いたってシンプルだ。

「どうだ。お味は?」

氷川が、さぞ言いたげな顔で「ちっとシンプル過ぎる。」とトダの顔に書いてあるぞ。」氷川もヒイラギさん宅で人間界の味をおぼえてしまったらしい。

「そうだな。人間界の多様な味や味覚に慣れてしまったようだ。すべては濃い方へと流されていく。味もそうだ。人間は流れに乗って多種多様な物、植物を日々進化させ、造り上げて来た。時は流れるが思考、種はつながれている。良いことだ。」

氷川がデザートのスイカを食べながら「だから、我々、神様が1日中、365日と数秒。毎日天上界から大鏡を使い人間界を見守っている。それに人間界の神社や神の結界地、陣地から見守っている。その見返りに人間からは穀物や、このスイカのように供物が渡される。いい関係だ。」

「そうだな。氷川、今更だけど人間界からの供物はどうやってこの天上界に来るんだ。」

「勉強不足だなトダ。試験に出るぞ。それは形ではない。人間が願ったことが形になってこの天上界に届く。例えば収穫の一部を神様にって感じで思ってくれたものが供物としてここに届く。」

「そうか。やさしい人間の思いが形にね。ありがとう氷川、納得したよ。それと調べたいことがある。この後、図書館に付き合ってくれ。」

「いいけど。何を調べるんだ?」

「時越え鳥だ。」


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