第46話  八幡先生は狸

僕は「八幡先生が狸だと?」神様でも人間でもない獣?見抜けなかった。

えべっさんが「そうだ。八幡神社の祠に住んでいた古だぬきだ。その昔、八幡神社は氏子が多くにぎやかな神社だったしかし、悪い人間たちに宮司さんがだまされて神社の半分の土地をとられてしまった。その土地は参道へ続く禊の地でそこをとられてからは悪いヤカラのたまり場になり神社は衰退していった。八幡神社の狸は優しい宮司を救おうと息子になりすまし、神社の再建に努めた。そして人間界の中学、高校、大学、そしてその間、数学の家庭教師をしていた。」

ミユが「えべっさん、数学教えるの上手だもん。生徒が狸でもバッチリよね。」

えべっさんがミユの頭をなでて「そうだ。そのとおり。」

賀茂君が「僕にはあの方が八幡先生だとは思えない。あの方の後ろに別の誰かがいる気がする。」

感の鋭い賀茂君。僕は「僕も賀茂君に同感だ。八幡先生は完璧に人間界で人間として過ごしている。しかし、狸は獣だ。いずれ変身できない時が来る。いくら宮司さんのためとは言え、別の誰かの意志によって動いている動かされている気がする。

弁天はどうみる?」

「そうだな。表のあの方は狸の八幡先生で間違いない。たぶん霧島ユイは、狸の八幡先生に恋したのは間違いない。それに、途中で人間ではないことに気づいたはずだ。しかし、一度好きになった心は人間はそう簡単に変えない。霧島ユイも変えなかった。それで雨乞い祭の盃を愛宕に渡した。」

僕は「じゃ、裏のあの方とは誰だろう?人間界の祭りごとの巫女の家をつぶして得をするもの。あるいは恨みがあるものは?賀茂君、心当たりは?」

「おい、トダこのタイミングで僕に聞くとはまるで陰陽師の僕が犯人のようではないか。」

「悪い、そういうつもりはなかった、賀茂君の感を聞いてみたかったんだ。」

「以外と近くにいる人間かもしれない。それにここの石段エリアには弱い結界を感じる。」

石丸が「それは人間がつくった結界?」

賀茂君が「そうだな。人間?あるいは精霊?」

僕は「この山は愛宕が言ってたように緑の木々が豊かだ。精霊?かもしれない?」

キリが「精霊は神様でも人間でもない形のないエネルギーの物体。雨にも精霊は力を及ぼすが力は弱い。その精霊が神様を、人間の巫女や陰陽師、獣までも欺くとは?そんな精霊を私は知らない。」

サラが「おばあちゃんが時々言うけど緑の植物には魂があり精霊が宿ると。」

「ヒイラギさんが?」



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