第44話 霧島ユイの闇

キリが起きた。「ミカ、ごめんなさい。あなたには才が無い。巫女なんかやめれば。本意ではなかったとはいえ、ごめんなさい。傷つけるつもりは、なかったの。ただ私も霧島家の巫女の。いっぱいいっぱいだったの。後だしじゃんけんのようで言い訳しているようで嫌なんだけど。すべて、姉。霧島ユイの闇が招いたもの。姉も普通の時は本当に明るい元気な姉。でも時々全く別人格になるときがあるの。信じられないと思うけど。」

サラが「さっきキリが何かに憑依されてたような感じ?」

「たぶん。」

キリは「さっき、愛宕、いいえ、

火の神様、愛宕一郎様ですね。」

愛宕が頷く。目の色が水晶のように輝く。

僕は愛宕の目の変化を見逃さなかった。

人間界に降りている神々は人間が神と認めた時に水晶のように輝き放つ。神堕ちの愛宕だが、神としての自覚はまだあるようだ。

石丸が「キリ、今更何を愛宕君に媚びてるの?霧島家が追い詰めて彼は神堕ちになったのよ。遅い。もう遅い。神社も無くなった。天上界の声も聞こえない。巫女の私も石丸家も消滅。

火祭はもうできない。」

サラが「キリでもお姉さんは誰に騙されていたのよね。」

「そう、あの方に。でもあの方が私にはわからない。ただ、先生とか?それに姉は、その人に恋をしていた気が。あの方と会いに行く時の姉は違っていた。

ただあの方が姉の気持ちを利用したのであれば許さない。」

愛宕が「あるかもしれない。僕が雨乞い祭の盃を見せてほしいとお願いした時にあの方に確認してからと霧島先生は言った。僕は風神様に確認するものだと思っていたが違った。そして、僕と石丸家の現状を憂いている。いっそ雨乞い祭も消滅させるとまで先生は言った。おかしいとは思ったが僕はその話に乗った。そして雨乞い祭の盃はここに。

トダ君、君は神様候補生だが、霧島先生のことも僕のことも薄々見通していたのでは?それで今日ここに来たってとこかな。」

僕は火祭の神様として愛宕が正直な気持ちを語ってくれたのがわかった。

礼に反してはいけない。神様の教科書に書いてある。

「その通りです。ただ確信は持てなかった。愛宕君も石丸さんも誰かに騙されていますね。」

「トダ君、君はすごいよ。やはり風神様が見込んだ神様候補生。君の力は強い。人間も神様も味方にする。」

ミユがしびれをきらす。「で、結果的に霧島家も石丸家はあの方にだまされてたってこと?」

僕は「その通りだ。」

みんな深くソファーに座りこむ。

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