第39話  霧島ユイ 不適合者

キリが話し始めた。「霧島家は代々巫女の家系。天上界とのつながりは1人と決まりがある。通常は長女がその役割を担う。もちろん適応者ゼロの時もある。その場合は適応者が生まれるまで巫女の席は空席となるの。このことは天上界の神様達はご存知。弁天、トダ君は知っているわよね。」そう言えば人間界とのつながりという教科書で勉強した。それによると神様に近い清い心の人間が選ばれる。俗と言う言葉が、はびこる人間界で清い心を持ち、なおかつ神通力の強い才を持つもの。適合者は稀である。

改めて見ると、キリはその性格公平さ、潔さ、すべて持っている。

すると姉は?霧島先生をやはり疑ってしまう。ただし、力、神通力だけは姉の方が大きいと鈍い僕でもわかる。となると。

キリが「霧島家の2人の巫女。これは異例よ。風神様が許可してくれたの。」

「丸太郎が?」

「風神様は姉の力をとても評価している。それに雨乞い祭以外の力も姉は使えるみたい。でもその力は人間の負の感情に共感するようで、姉が14歳の時に風神様が封印したの。私は6歳。

あれから10年姉は少し変わった。

あんなに楽しそうに雨乞い祭を行っていたのに、私に巫女をやるようにと言い出した。霧島家2人巫女が誕生した。」

僕は、キリの話で霧島先生へ感じていた違和感の謎が解けた。

先生の神がかり的な力の強さと負の力。愛宕。何かが動き出していることは間違いない。しかし、何かを忘れているような?見落としているような?

賀茂君が「これでみなさん、謎は解けましたね。愛宕を手引きして、ここの盃を盗ませたのは霧島先生で間違いない。実際、盃は愛宕に手元にある。式神が教えてくれている。それに、いくら神堕ちの神様だが愛宕は火の神様だ。長いこと真逆の水家を手元に置けないはずだ。 捨てた?なぜ?誰かに渡した?誰に?」

僕は思い出した。”あの方”ヤカラの清水さんの言葉。”八幡先生には気をつけて”あの方がそうなのか。八幡先生からは、それらしきエネルギーは感じられない。僕が鈍すぎるのか。

それか八幡先生がうまくやり過ごしているのか。

賀茂君が続ける。「これから愛宕の家に押し入る。」「えっ!」みんなも驚く。

「神様が泥棒のような真似をしていいのかな。」サラが。

弁天は「いいに決まってる。奪われたものを取り返すのよ。天罰よ。」

”隠れ蓑”を弁天がみんな渡した。神様の道具よ。そして奪還準備がはじまる。

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