第11話 トダ午後の授業

教科書のない僕は、隣の清水さんに朝からずーっと机を並べて見せてもらっている。

5時間目、古典少し眠い。先生が霧島先生なので、ねてしまうと絶対にまずい。僕は必死で目に力を入れた。

「トダ君、お昼はどうしたの?」

「学食。でもおばあさんさんのお弁当。」

「誰かと一緒だった?」

「妹が1年にいて、妹の友達と。」

「へえ、トダ君、妹さんと仲いいんだ。

「まあ。」

「ところでその鈴。」

「鈴?」

清水さんが僕のポケットを指差した。

見えない鈴。どうして清水さんは、分かったのか?

「それこの世界のものじゃないよね。トダ君、君もこの地上界の人では、ない・よ・ね。」

「えっ?」“ズキーン。”頭がいたい。白い靄が、

「いたい。」僕の記憶?僕はただの平凡な高校生だ。

「清水さん、ポケットの鈴は友達がくれたんだ。プレゼントだ。それに・・・隠すつもりはないけど、僕は何処かで頭を強く打ったようで、記憶喪失中なんだ。」

「記憶喪失?」

「自分で言うのも変だけど。不便だ。自分が何者で、どこから来たのか、時々分からなくなる。記憶がとぎれとぎれだ。」ここからは少しだけすまない、嘘をつく。

「それで離婚して母に引き取られた妹、そう1年のサラとおばあさんの家に今は、お世話になっている。」

「へーえ、そうなんだ。」”清水さんは、僕の話を信じたようだ。”

しかし!清水さんは「トダ君も大変ね。」そう言いながらも僕のポケットの中にある鈴から清水さんの視線は離れない。「ねえ、トダ君、その友達からのプレゼントの鈴、ちっと見せてくれない?」

僕は胸のポケットに手をあてて、次の瞬間、清水さんが豹変、手が伸び、

「はい。そこまで。清水、何をやっている!」

目の前に霧島先生が立っている。豹変した清水さんの顔が普通の学級委員の顔に戻っている。さっきまでのこわさもない。「すいません先生。」

清水さんの言い訳が続く「トダ君が古典の授業退屈そうだったので、ちっとからかってました。ちゃんと授業に集中します。」

霧島先生は「そうか、集中するように。」そうして僕の横を通り越しに「その鈴は危険だ。朝、言ったよなトダ。」小さくつぶやき教壇へ戻った。

「じゃ次のページ、中村読んでくれ。」「はい。」こうして授業が続き、終業時間。

僕は一番に教室を出た。1F玄関ホールにサラがいた。「トダ、大丈夫だった?」

「まあ、何とか。」気のなることはあったが・・・「トダ、帰るぞ。」

「そうだな。」








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